噴火湾における粒子の挙動(シンポジウム:噴火湾の物質循環における春季珪藻ブルームの役割)
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概要
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北海道噴火湾の湾央の定点でセジメントトラップ実験を行った.トラップに捕捉される沈降粒子の量は3月に多かった.化学成分は,有機物,生物起源ケイ酸塩が優占していた.噴火湾では,この時期,ケイ藻プランクトンの大増殖があったことから,ケイ藻由来の生物起源粒子が大量に下層に運ばれたことがわかった.この粒子には,Cd>Cu>Ni>Feの順で金属元素が濃縮しており,化学物質の表層から下層への輸送に大きな役割を果たしていることが示唆された.ケイ藻プランクトンの増殖によって,海水中の溶存ケイ酸塩が優先的に使われる.そのため,海水中のケイ酸塩/全窒素(硝酸塩,亜硝酸塩,アンモニア)の比は時間とともに小さくなった.底層に運ばれた粒子はモル比で,P:Si:C=1:52:128の割合で再生していた.冬季には,大きな粒子束が観測された.この時の粒子は,有機物が少なくほとんどアルミノケイ酸塩であった.また,半減期24日の^<234>Thの粒子束が,親の^<238>Uからの生成量に比べて大きかった.このことは,冬季には,海水の鉛直混合によって粒子が上下に運動しながら沈降していることを示唆している.噴火湾におけるケイ酸塩の収支を描いた.外洋から流入してくる海水中のケイ酸の約34%が噴火湾堆積物に固定されていることが示唆された.
- 日本海洋学会の論文
- 2000-08-25
著者
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佐々木 建一
海洋科学技術センター
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乗木 新一郎
北海道大学大学院地球環境科学研究科
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佐々木 建一
名古屋大学大気水圏科学研究所
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乙坂 重嘉
北海道大学大学院地球環境科学研究科
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乗木 新一郎
北海道大学水産学部水産化学科
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乙坂 重嘉
日本原子力研究所むつ事業所
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