K.バルトの神理解とイデアリスムスの問題 -とくに中期プラトン主義のイデア論及びその影響史を視野に入れて-
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概要
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4世紀に成立したキリスト教教義に批判的な判断を下したA.v.ハルナック,Fr.ローフスは,2世紀以降の,啓示と理性の歴史的複合体である,弁証論者の思想にも否定的判断を下した。しかしながら,弁証法神学あるいは新しい哲学史(Hans-J.Krämer, A.H.Armstrong)・教義史(C.Andresen)などの歴史的パースペクティヴィによれば,四世紀までの初期キリスト教は,これを取り巻く思想的環境(帝政期のプラトン主義,グノーシス主義,ストア派)から大きな影響を受けながらも,これに対して弁証の課題を果たしたと判断される。この思想環境の中でも,とりわけプラトンの後継者たちに於いて相互の論争の的となった師の著作『ティマイオス』(27A-52B)におけるコスモロジーから導出された,哲学的神論における二類型(Hans-J.Krämer. Kraemer, 1963),「思考としての根拠」(Grund als Denken,クセノクラテス-アリストテレス)および「思考を超越するものとしての根拠」(Grund als Über-Denken,スペウシッポス-プロティノス),また「神の思惟内容としてのイデア」のモチーフは,スコラ神学,またこれを経由した近世における「有限的主観性」(Kant, Descartes)へと,恒常的な影響を及ぼした。拙論では,とくに中期プラトン主義の「神の思惟内容としてのイデア」のモチーフの,主にフィロンによるユダヤ教的受容,またアウグスティヌス,トマス・アクイナスにおけるキリスト教的受容を跡づけながら,20世紀のK.バルトの神論を,西洋哲学史・神学史にたいする中期プラトン主義の恒常的影響の圏外にあり,アタナシウスなどの系譜を引くものとして注目した。(未完-本稿は,国際基督教大学学報IV B「人文科学研究」(キリスト教と文化)21,1987年12月,所収の拙論,キリスト教神論におけるヘブライズムとヘレニズム-K.バルトの神理解とイデアリスムスの問題-,の前半部のドイツ語訳であり,ドイツ訳への翻訳のさい,一部を加筆・改稿した)。
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