K.バルトのジェンダー理解:啓蒙主義からのキリスト教思想に対する問いかけとして
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概要
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現代フェミニズムの思想史的起原は啓蒙主義(M.ウルストンクラフト[1792],J.S.ミル[1869])にあるが,キリスト教思想は伝統的に,父権制と連携して,女性に対する抑圧に加担してきた。拙論は,***ースとアガペーというカテゴリーではなく,現代フェミニズムにおいて使用される,***・セクシュアリティ・ジェンダーのカテゴリーを用いて,K.バルトの思想における***ース性理解とジェンダー理解を再構成し,とくにそのジェンダー理解の意義と射程の検討を意図したものである(I)。バルトの***ース性についての理解は,KDIII/2,§45,KD IV/2,§68において,またジェンダーについての理解は,20年代後半の倫理学講義,KDIII/2,§54,KDIV/1-IV/3/2における共同体論(§62,§67,§72)および信仰論(§63,§68,§73)などで展開されている。***ース性は,人間性に内属する,その述語とされ,主題としては,マージナルな位置を占めるものと理解されており,これに対しジェンダーについては,最初に言及される『死人の復活』(1924)においては,聖書の示す「秩序」を根拠に,男性の優越性が擁護されているが,30年代に教義学方法論としてアナロギア・レラチオニスが確立されて以来,KDIII/1(1945)などにおいては,男性の女性にたいする優位の思想は払拭されている(II)。さらに,現代キリスト教思想の領域で展開された諸家の業績の中,***ース性等の理解については,U.バウマン(1970),I. ぺイゲルス(1988)を,ジェンダー理解については,E.S.フィオレンツァ(1983)を前提にしつつ,R.R.-リューサー(1983),H.エアハルト/ L.ジーゲレ・ヴェンシュケヴィッツ(1993)-これに基づいてH.ヴィサートーフト(1934,1934)-を,それぞれ検討した(III)。最後に,現代フェミニズムからの問いかけによって課せられたキリスト教思想におけるジェンダー理解の検討を,前者の思想母体である啓蒙主義からのキリスト教思想への問いかけとして,広い視点から受け止めながら,フェミニズムとバルトの思想の共通性をそれぞれのモデルネ(近代主義)批判に見出し,開かれた「啓蒙」の中に両者の対話の可能性があることを指摘した(IV)。
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