K.バルトの教義的神学のキリスト教性 : そのイデアリスムス批判を考慮しつつ
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概要
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拙論は,論文「キリスト教神論におけるヘブライズムとヘレニズム-K.バルトの神理解とイデアリスムスの問題-」(1987年)の最終部に位置づけられ,その結論を構成する。1987年論文においては,イデアリスムスの原型を中期プラトン主義の神論にみいだし,「神の精神におけるイデア」という中期プラトン主義の根本モチーフを,バルトの神論と批判的に対論させた。その結果,バルトの神理解及びいわゆる「関係のアナロギア」を中心とした啓示理解は,初期キリスト教以来このモチーフに疎遠であったイグナティオスーアタナシオスの系譜につらなることを論じた。-本論においては,エルランゲンの教義史家K.バイシュラーク(1987)が初期から4世紀に至るキリスト教史に対して区別・設定した二つの線,イグナティオス-エイレナイオス-アタナシオスという線および弁証論者-オリゲネス-カッパドキア教父という線とその区別の意味に注目し,バルトの神論は,前者に連なること,また,H. U. v.バルタザール(1956)が,バルトの神学的姿勢がアウグスティヌス以前の神学に連なるという指摘に注目し,バルトの神論の有する反イデアリスムスのインプリケーションを抽出しようと努めた。バイシュラークの設定したイグナティオス-エイレナイオス-アタナシオスの線は,世界観としてのプラトニズムに係わりなく「啓示に集中した」(offenbarungsintensiv)神理解を維持・進展させ,バルタザールは,バルトの思索の実践的性格の中に,とりわけオリゲネスなどに代表されるアウダスティヌス以前のキリスト教思想との連続性を見出している。
- 2005-12-25
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