家庭での構造化された指導法に関する実態およびその実践に影響を与える要因 : 自閉症スペクトラム児の親への質問紙調査およびインタビュー調査から
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
現在,自閉症スペクトラム (ASD) 児への支援手法としてTEACCHプログラムにおける構造化が評価されており,そのTEACCHプログラムでは家庭における構造化の実践を重要視している.しかしながら,わが国において家庭での構造化実践に関する研究は実践的なケース研究が大半を占めており,親による家庭での構造化の実態や家庭での実践に及ぼす要因について調査した研究は少ない.そこで,本研究では(1)家庭での構造化に関する実態について明らかにすること,(2)家庭での構造化実践に影響を与える要因について明らかにすることを目的とし,療育機関を利用する親を対象に質問紙調査 (75名) およびインタビュー調査 (3名) を実施した.質問紙調査の結果,ASD児の親は構造化についての理解があり,構造化の有益性を実感しているものの,その理解と実感のみで家庭での実践につながるとは限らないということが明らかになった.また,構造化の支援手法の1つであるスケジュールの家庭内実践と,療育目的であるA事業の利用経験に関連性が見られたことから,A事業の特色である療育計画および個別相談が家庭でのスケジュール実践に影響を与えているということが推測された.インタビュー調査の結果からは,家庭での構造化実践の継続に至るまでの過程およびこれに影響を与える要因が明らかになった.ASD児の親は構造化を知ると同時に有益性を感じていたが,最初に有益性を感じた構造化とは他人がおこなった構造化であり,親自身が実践した構造化に有益性を感じて実践の継続に至るまでには【親の意識・意欲】【構造化に関する理解】【支援環境】が影響を与えていた.また,これらの要因には療育機関の働きかけが大きな影響を与えており,ここから療育機関が果たす役割についても明らかになり,家庭での構造化実践における専門機関の必要性および専門的知識・技術を持った支援者の必要性が示唆された.
著者
-
小林 信篤
川崎医療福祉大学医療福祉学部医療福祉学科
-
佐々木 正美
川崎医療福祉大学医療福祉学部医療福祉学科
-
木村 友香理
社会福祉法人北摂杉の子会
-
佐々木 正美
川崎医療福祉大学医療福祉学科
-
木村 友香理
川崎医療福祉大学大学院医療福祉学研究科医療福祉学専攻
-
佐々木 正美
川崎医療福祉大学
関連論文
- 自閉症児への支援技法である構造化における評価の重要性
- 自閉症児・者支援に対する視点変化のプロセス : TEACCHトレーニングセミナー受講者の語りから
- 家庭での構造化された指導法に関する実態およびその実践に影響を与える要因--自閉症スペクトラム児の親への質問紙調査およびインタビュー調査から
- 家庭での構造化された指導法に関する実態およびその実践に影響を与える要因 : 自閉症スペクトラム児の親への質問紙調査およびインタビュー調査から
- 自閉症スペクトラム児への構造化された指導法に対する親の期待 : 療育機関を利用する親への質問紙調査を通して(川崎医療福祉学会第37回研究集会)
- ソーシャル・スキル・トレーニング (特集 発達障害の診かた--プライマリ・ケア医に知ってもらいたいこと) -- (治療)
- 発達障害への理解と対応 : 思春期をより円滑に乗り越えるために
- 乳幼児期における遊びの質および生活状況の日本と中国の比較(川崎医療福祉学会第35回研究集会)
- 自閉症支援における評価の重要性 : AAPEPによる評価と職員の事前評価との比較から
- 自閉症療育 : TEACCHモデルの世界的潮流
- TEACCHの考え方を取り入れた自閉症児・者に対する歯科治療適応訓練(川崎医療福祉学会第31回研究集会)
- 子どもたちのための医療福祉 : コミュニケーションへの希望を求めて(医療福祉学展望)
- 自閉症TEACCHプログラム : 理解と共生に向けて
- 岡山・上海・大連における子育てに関する比較考察
- 自閉症児の行動および言語に及ぼす水中運動の影響
- 学習障害をどう考えるか
- 自閉症連続体(Autism Spectrum, AS)と学習障害(Learning Disabilities, LD)及び注意欠陥多動性障害(Attention Deficit Hyperactivity Disorders, ADHD)との連続性
- 『21 世紀家族』と子ども : 近代家族の曲がり角における家族と保育の創造
- 自閉症という文化をもつ人々とのコミュニケーション
- 身体症状を示し登園拒否を呈した5歳女児の治療経過 : 軽度発達障害の視点から
- TEACCH、わが国の現在 (特集 発達障害のいま) -- (発達障害をめぐる理想と現実)
- 心理療法 TEACCH (特集 アスペルガー症候群--病因と臨床研究) -- (治療の進歩)
- 自閉症は増えているか (特集2 自閉症・軽度発達障害は増えているか)
- 子どもと不適応行動 (子どもの理解--こころと行動へのトータルアプローチ) -- (子どもが陥りやすい「こころ」と「行動」)
- 東京都地方会講演記録 現代日本の子どもと家族の孤独--人間存在の意味/価値は人間関係の中にある (子どもの心のケア--温かく育むために)
- TEACCHプログラムから (特集 自閉症とともに生きる) -- (自閉症児の療育)
- 望ましい精神科医療についての意識調査
- 小学校の特別支援学級における自閉症スペクトラムの児童への構造化による支援について: 「ワーク・システム」の有効性の検証(川崎医療福祉学会第37回研究集会)
- 個別の評価に基づく構造化された指導法を用いた自閉症児支援(川崎医療福祉学会第39回研究集会)
- アセスメントに基づく視覚的構造化による支援の重要性 : 自閉症女児の一事例を通して(川崎医療福祉学会第39回研究集会)