自閉症児への支援技法である構造化における評価の重要性
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
米国ノースカロライナ州では幼児期から成人期にいたる自閉症者のための包括支援プログラムとしてTEACCHプログラムがあり,それに基づいた教育・支援が行われている.その支援技法として「構造化」があり,日本においても実施され,その有効性も数多く報告されている.本研究では,あらかじめ構造化された環境の中で生活してきたにも関わらず,怒る,泣くといった不適応行動を生じさせた自閉症児に注目し,構造化・再構造化における評価の重要性をあきらかにすることが目的である.介入前の予備調査として対象児の行動観察を行ったところ,対象児に提供されていた構造化は事前評価のされていないものであることがわかった(今回は対象児に提供されていたスケジュールの再構造化に焦点をあて,報告する).また,クラス担任による写真カードの用いられ方に混乱をしていることがわかった.行動観察を行い,それに基づき対象児の強みとなる力などを評価し,構造化・再構造化することを繰り返し行い,支援開始前と約1カ月後の対象児の行動を比較検討した.支援開始前は約5時間の療育時間内で不適応行動が21回(約15分弱に1回)生じていたが,1カ月後には6回(約50分に1回)と減少した.また,クラス担任の行動にも変化がみられた.インタビューを行ったところ,1カ月の実践の中でクラス担任には心理的な変化も生じていたことがわかった.対象児の不適応行動の原因は構造化自体ではなく,構造化の「あり方」にあった.事前評価をせずに構造化をした環境は自閉症児にとっては不適切なことが多い.構造化は観察をし,評価を行ったうえで実施するからこそ,その有効性が発揮されるということが言える.
著者
-
小林 信篤
川崎医療福祉大学医療福祉学部医療福祉学科
-
佐々木 正美
川崎医療福祉大学医療福祉学部医療福祉学科
-
小林 幸代
川崎医療福祉大学大学院医療福祉学研究科医療福祉学専攻
-
佐々木 正美
川崎医療福祉大学医療福祉学科
-
佐々木 正美
川崎医療福祉大学
-
小林 幸代
川崎医療福祉大学医療福祉学研究科医療福祉学専攻
関連論文
- 自閉症児への支援技法である構造化における評価の重要性
- 自閉症児・者支援に対する視点変化のプロセス : TEACCHトレーニングセミナー受講者の語りから
- 家庭での構造化された指導法に関する実態およびその実践に影響を与える要因--自閉症スペクトラム児の親への質問紙調査およびインタビュー調査から
- 家庭での構造化された指導法に関する実態およびその実践に影響を与える要因 : 自閉症スペクトラム児の親への質問紙調査およびインタビュー調査から
- 自閉症スペクトラム児への構造化された指導法に対する親の期待 : 療育機関を利用する親への質問紙調査を通して(川崎医療福祉学会第37回研究集会)
- ソーシャル・スキル・トレーニング (特集 発達障害の診かた--プライマリ・ケア医に知ってもらいたいこと) -- (治療)
- 発達障害への理解と対応 : 思春期をより円滑に乗り越えるために
- 乳幼児期における遊びの質および生活状況の日本と中国の比較(川崎医療福祉学会第35回研究集会)
- 自閉症支援における評価の重要性 : AAPEPによる評価と職員の事前評価との比較から
- 自閉症療育 : TEACCHモデルの世界的潮流
- TEACCHの考え方を取り入れた自閉症児・者に対する歯科治療適応訓練(川崎医療福祉学会第31回研究集会)
- 子どもたちのための医療福祉 : コミュニケーションへの希望を求めて(医療福祉学展望)
- 自閉症TEACCHプログラム : 理解と共生に向けて
- 岡山・上海・大連における子育てに関する比較考察
- 自閉症児の行動および言語に及ぼす水中運動の影響
- 学習障害をどう考えるか
- 自閉症連続体(Autism Spectrum, AS)と学習障害(Learning Disabilities, LD)及び注意欠陥多動性障害(Attention Deficit Hyperactivity Disorders, ADHD)との連続性
- 『21 世紀家族』と子ども : 近代家族の曲がり角における家族と保育の創造
- 自閉症という文化をもつ人々とのコミュニケーション
- 身体症状を示し登園拒否を呈した5歳女児の治療経過 : 軽度発達障害の視点から
- TEACCH、わが国の現在 (特集 発達障害のいま) -- (発達障害をめぐる理想と現実)
- 心理療法 TEACCH (特集 アスペルガー症候群--病因と臨床研究) -- (治療の進歩)
- 自閉症は増えているか (特集2 自閉症・軽度発達障害は増えているか)
- 子どもと不適応行動 (子どもの理解--こころと行動へのトータルアプローチ) -- (子どもが陥りやすい「こころ」と「行動」)
- 東京都地方会講演記録 現代日本の子どもと家族の孤独--人間存在の意味/価値は人間関係の中にある (子どもの心のケア--温かく育むために)
- TEACCHプログラムから (特集 自閉症とともに生きる) -- (自閉症児の療育)
- 望ましい精神科医療についての意識調査
- 小学校の特別支援学級における自閉症スペクトラムの児童への構造化による支援について: 「ワーク・システム」の有効性の検証(川崎医療福祉学会第37回研究集会)
- 個別の評価に基づく構造化された指導法を用いた自閉症児支援(川崎医療福祉学会第39回研究集会)
- アセスメントに基づく視覚的構造化による支援の重要性 : 自閉症女児の一事例を通して(川崎医療福祉学会第39回研究集会)