小笠原諸島父島における乾性低木林の21年間の個体群動態(<特集>亜熱帯域島嶼の生態系管理(I):未来環境創造型基礎研究プロジェクトから)
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概要
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小笠原諸島父島の乾性低木林内に永久方形区(30m×30m)を1976年に設置して毎木調査を行い,1986年と1997年に再調査をして構成種の階層ごとの個体群動態を調べた.この21年間に,1980年と1990年の干ばつによる林床の実生個体の大幅な減少,1983年の17号台風による優占種シマイスノキの樹冠の損傷と林内の光条件好転によるムニンアオガンピやリュウキュウマツの稚樹の成長促進,1984年と1993年に大発生したオオシラホシアシブトクチバの食害によるアカテツの個体数減少などがみられた.全体として,もともと個体数の多かった優占種群は全階層にわたって個体数を維持したが,稀産種のシマムラサキ,オオミトベラ,ナガバキブシなどは大幅に個体数を減らし,かつ新たな幼個体もほとんど現れなかった.稀産種の減少の理由としては,上記の2度の干ばつと1990年代の小雨傾向,戦前と比較して最近30年間の年降水量が340mmも減少していることの影響が考えられる.今後,乾性低木林の稀産種の絶滅と種多様性の低下が起こることが憂慮される.
- 1999-12-10
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