境界例治療経験をもつ成人のライフヒストリー : 退院から20 年経過した体験のふり返り
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概要
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本論では、著しい行動化を示すといわれる「境界例(ボーダーライン)」の診断により入院治療を要した成人男性を対象にして、退院後20 年を経過した時点でインタヴューを実施し、「自らのふり返り」を通して、アイデンティティ確立過程における「体験」構造を探求することを試みた。対象者は、幼少期から母親との離別、父親との死別、希薄な親戚関係から「見捨てられ体験」を繰り返し、それがトラウマになって感情の暴発や突然の卒倒などの行動化を起こしていた。入院体験をターニングポイントに、職場の同僚や妻の支えによって対象者のリジリエンスは高まり、仕事上の成功体験、守るべき家族の存在によって、こころの傷は癒され、自己の再構成を遂げていった。境界例患者の持つ病理は、看護役割を自覚しつつも患者の自己中心的な行動に否定的感情を抱き、看護者自身の傷つき体験につながる特徴をもつ。こうした悪循環を止めるためには、看護者自身の内面的洞察と自己理解を通じて、患者の生育歴の十分な分析に基づいて関わりの糸口を探り、自立生活を送れるよう自らが自覚する方向で支援する必要性が示唆された。
- 2010-03-31
著者
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