期待権侵害に関わる医事裁判例
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概要
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医療過誤における医師の法的責任は,原則として,医師の注意義務違反・患者の損害発生,医師の注意義務違反と患者の損害との間の因果関係の3者がそろった時にのみ追及される.しかし,この3者の中で因果関係が認められない場合でも,適切な医療を求める患者の期待を裏切ったとして,医師は損害賠償義務はないとしても慰謝料を払わなければならないことがある.この考え方は「期待権」侵害と称される.医事訴訟における期待権侵害を肯定する判例は,昭和51年以降注目されているが,このような判例についての最近のレビューとしての報告はない.本稿においては,最近の判例に焦点をあてて,期待権侵害に関わる医事判例の概要を把握し,解析することを目的とする.昭和22〜平成13(1947〜2001)年の誌上公開判例を収集した判例データベース判例マスターを用い, "期待権"あるいは"期待権侵害"をキーワードとして該当判例を抽出した.抽出された判例は,56判例51事例であり,控訴審8例・上告審1例を含んでいた.上級審での判断が少ない点に特徴があるが,最高裁においても期待権という概念が使用されている.全体では,期待権侵害が肯定された判例が41例,否定された判例が12例であり,肯定判例が優勢である.期待権侵害を肯定する判例では,債務不履行責任・不法行為・債務不履行と不法行為の双方を法的根拠とするものがほぼ等数であった.期待権の内容は,時代の変遷に伴って変化し,延命のみならず,後遺障害等を含むものとなり,最近では「適切な治療を受ける権利」として把握されている.更に,期待権侵害の肯定判例における慰謝料の認容額は低額にすぎることが指摘され,最近では高額化してきている.期待権等侵害医事判例においては,医師の賠償責任が拡大される傾向にある.
著者
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澤口 聡子
東京女子医科大学医学部法医学教室
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澤口 聡子
東女医大・法医
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沢口 聡子
東京女医大 医 法医学
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沢口 聡子
東京女子医科大学 法医
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澤口 聡子
東京女子医科大学 医学部法医学教室
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澤口 彰子
Department Of Legal Medicine Tokyo Women's Medical University School Of Medicine
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