教育労働と専門性 : 高等専門学校を事例として
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
教育の質的向上についてかんがえるとき,教育という営為の労働としての側面に着目する視点をもつ必要がある.教育という営為には,その一般的特徴として,再帰性・不確実性・無境界性という性質があるとされている.それに,日本社会で顕著な教育万能主義とそれにもとづいて構成されている学校中心社会や,教員がみせる「熱意」の量を重視する教育観や教職を聖職視するイデオロギーの影響がくわわり,教員の職務とされる領域は無制限に拡大している.高等専門学校の独自な教育制度はその傾向をいちじるしくしている.その結果,各専門分野における専門性のうらづけをもった存在であるはずの教員は,専門性を発揮する余地は極小化され,教育実践を専門性の担保による質的保証のないものとし,同時に,教育実践の質的低下がおこっている.しかし,その当事者たる教員のがわにそうした現状を問題として捉える視角はみられず,逆に職務の拡散を肯定する傾向がある.本稿では,現在の教育労働のありかたと教員の職務のとらえかたを批判的に検証し,教育の質的向上のために必要な要素として教員・教育実践における専門性の回復をあげ,そのために必要な諸条件について論じた.
- 2009-10-30
著者
関連論文
- 教育労働と専門性 : 高等専門学校を事例として
- 「学習の動機づけ」からみたカンニング
- 教養教育の再構築 : 「学習意欲」と「動機づけ」の視点からかんがえる
- 高専女子卒業生の就労動向とキャリア教育
- 教育における人格概念の位置と機能 : 高等専門学校などにおける課外活動の検討をもとに(第1回論文特集号)
- 識字運動の構造--同化主義・能力主義の再検討によるコミュニケーションのユニバーサルデザイン (情報弱者のかかえる諸問題の発見とメディアのユニバーサル・デザインのための基礎研究)
- 「学習の動機づけ」からみたカンニング
- 「学習の動機づけ」からみたカンニング
- 創造性をはぐくむ教育実践の条件について
- じゃんけんのユニバーサルデザイン--構造的差別に視点をおいた人権教育実践
- 識字運動の構造--同化主義・能力主義の再検討によるコミュニケーションのユニバーサルデザイン
- 4-2-1教養教育の再構築(セッション4(一般講演2),日本高専学会第13回年会報告,木更津年会)
- 言語権からコミュニケーション権へ
- 言語権のひとつの帰結としての計画言語
- 人権教育の現場から 高専におけるジェンダー教育実践をもとにかんがえる(下)
- 人権教育の現場から 高専におけるジェンダー教育実践をもとにかんがえる(中)
- 高専女子卒業生の就職の状況
- 人権教育は今 高専におけるジェンダー教育実践をもとにかんがえる(上)
- 6. 高等専門学校における教育労働の特性(4. 第1セッション「一般講演」, 日本高専学会 第11回年会の報告)
- 書評 木村護郎クリストフ・渡辺克義「編」『媒介言語論を学ぶ人のために』
- 識字/情報のユニバーサルデザインという構想 : 識字・言語権・障害学 (特集 リテラシー再考)
- 平等主義としての計画言語--言語をめぐる差別と人権(3)
- 日本社会における言語差別--言語をめぐる差別と人権(2)
- 書評 日本手話は「自然言語」か : 佐々木倫子(ささきみちこ)編『ろう者からみた「多文化共生」 : もうひとつの言語的マイノリティー』