教育における人格概念の位置と機能 : 高等専門学校などにおける課外活動の検討をもとに(第1回論文特集号)
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概要
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高等専門学校(高専)もふくむ公教育機関における教育実践では,「人格」や「人間性」という概念がその実践内容の目的・効果を説明するに際して常套的にもちいられている.この傾向は教育の説明責任をより明確にはたすことを求めつつある社会環境によってつよまっている.とくに正規のカリキュラム外にありながら,学校教育で重要な位置づけを与えられている課外活動は,もっぱら「人格の陶冶」にその教育的意義があるとされている.しかし,人格・人間性といった高度に抽象的な概念であらわされるものの「向上」を教育目標にすえることが教育にもたらしている弊害はちいさくない.かような問題意識のもとで,本稿は,高専における課外活動を主たる題材として,人格概念を教育実践の具体的目標とし,実践内容の合理化・正当化のための手段とすることが教員・教育組織による教育の説明責任放棄を可能にし,必然的に教育の質低下をまねかざるをえないこと,そのなかには,体罰(身体的暴力)の肯定などの深刻な弊害もふくまれていることを論じている.これらの指摘からは,高専教育の質的向上のために,教育組織および個々の教員のとりくみが必要な具体的課題が抽出される.
- 2007-05-14