中国自動車産業における民族系企業の競争優位と発展戦略について : 「非定常的競争優位」と「意図せずに周辺から中心に向かう戦略」
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概要
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「大型国有企業優遇」と「外資の積極的利用・優遇」の色彩が強い中国自動車産業における民間民族系メーカーの競争環境は,周知のように非常に厳しい.したがって,民間民族系メーカーは主要競争力指標においてきわめて不利な立場に立ち,競争市場における自動車企業としての不可欠の定常的競争優位を十分に持っていない.ところが,民間民族系企業は,中国自動車市場が世界第2位に躍進し膨張を続けているなかで,着実に台頭することを通して,中国国内の自動車産業地図を変化させている.ここから生じる問題点は,民族系メー力ーの台頭と躍進をどのように理解したらよいかであるが,その理由について,本稿は二つの仮説を提起する.(1)民族系自動車企業(とりわけ民間企業)は,大型国有企業および外資系企業にない「非定常的競争優位」を持っており,そのことが民族系企業の成長と躍進を支える重要な源泉となっている;(2)多くの民族系メーカーが,自身のハンディキャップを克服するため,「周辺市場から中心市場へ」という発展戦略を意図せずにして採用している.これが完全に実行されれば,最終的に中心市場を掌握する可能性が高い.民族系メーカーの将来における可能性についていうと,筆者は極めて楽観的な立場にある.つまり,民族系メーカーの一部,とりわけ民間メーカーは,将来大きく成長し,中国自動車市場の最有力なプレーヤーになる可能性がきわめて大きい.
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