小笠原諸島におけるスガイ類(未記載種)の生息状況
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概要
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これまで小笠原諸島に分布するスガイ類はオオベソスガイLunella cinereaと同定されてきたが, Fukuda (1993: p.21)は(1)殻は全体的に暗褐色で,臍孔部のみオレンジ, (2)螺肋に多数の顆粒がある, (3)真珠層の伸張部が臍孔を越えて広がる, (4)真珠層伸張部の縁が刻み目状, (5)臍孔が円形, (6)歯舌の中歯の菌尖が緩やかに曲がる, (7)湾内の小石混じりの泥干潟に生息する,の7点でオオペソスガイとは区別でき,新種の可能性が高いことを指摘した。1940年から1990年代まで連続的に,小笠原諸島ににおけるスガイ類の生息はオオベソスガイとして記録が残っているが(倉田・他,1969; 松本・他, 1970など),近年採集例が減少し, 2005年の夏の2個体の発見(佐々木,私信)を境に生息は確認されていない。また,オオベソスガイと同定されてきたために,このスガイ類の生態的な記録もなされてこなかった。筆者らは, 2006年6月8日〜18日にかけて小笠原諸島父島でこのオオベソスガイと区別できるスガイ類の1種(本稿ではLunella sp.とする)の調査を試み,計8個体のLunella sp.の生息を確認するとともに,分子系統学的研究の為の標本の採集を行った。尚,島内では本種以外のスガイ類の生息を確認することばできなかった。本稿では本種の生態学的観察も含めてその生息状況についてここに報告する。
- 日本貝類学会の論文
- 2007-02-28
著者
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中野 智之
National Museum of Nature and Science
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中野 智之
国立科学博物館
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高橋 恭子
名古屋大学大学院・環境学研究科
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中野 智之
名古屋大学大学院・環境学研究科
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中野 智之
名古屋大学・環境
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