流出解析による流域保水容量の推定
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概要
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全国107ヶ所の多目的ダム流域について,既存の資料を用いて流出解析を行い,これをもとに流域としての保水容量を推定した。表層地質別の平均流域保水容量は,変成岩類流域が253mm(最大376mm,最小164mm)で最も大きく,以下,花崗岩類流域252mm(最大416mm,最小74mm),火山岩類流域213mm(最大470mm,最小74mm),中古生層堆積岩類流域207mm(最大442mm,最小76mm),第三紀層堆積岩類流域188mm(最大401mm,最小67mm)であった。また,107流域全体の平均流域保水容量は219mmとなり,この値はダム湖の平均有効貯水容量233mmとほぼ同程度であった。地域的には近畿,四国地方が200mm以下であるのに対し,東北地方が最も大きく平均247mmであった。こうした違いをもたらす原因としては,表層地質分布の地域的なばらつきや火山灰の混入度合いの違いなどが考えられた。さらに,流出解析から推定した流域保水容量と孔隙解析から推定された森林土壌の保水量は,ほぼ同じレベルの値を示した。このことから,森林流域における水流出特性と土壌の保水特性は密接な関係にあり,直接流出のみならず基底流出にも土壌が強く関与していることが示唆された。
- 森林立地学会の論文
- 1995-12-30
著者
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