物件費に見る地方財政 : 西高東低型構造解明の一環として
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概要
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いわゆる政策と直結しない地方財政の物件費は検討対象とすることに意慾がかき立てられない費目であるが,具体的にとりあげてみると多くの興味ある検討課題が提示された。事柄の内容にいたるまでの解明はしなかったが,いろいろの観点から物件費を区分することで,経費総体では予想しえなかった内容を知りえた。地方財政総体を西高東低型としてとらえてきた視角からは,物件費の東高西低型は意外性の第一であろう。西高東低の関係が基本的には国からの補助交付金と結びつくという整理の仕方からすれば,国庫支出金と無縁な物件費が西高東低とは逆関係となることは別に不思議ではないのかもしれない。しかし,それがあまりにも画然としている点,また国庫支出金と縁のうすい地方の人件費(一応義務教育費関係は省いて)が西高東低である点を配慮すると,にわかに納得できる条件ではない。人件費との対比で考えると,人件費の内訳は多様ではあるが,費目相互の連繋があって構成についても大きな変化はないのに対して,物件費では単に内訳が多様であるというのではなく,施策に即した支出の型が明確ではなく,費目構成についての時期による変化があり,また団体あるいは地域によっても構成が異なって,状況が複雑となり把握が困難となる。ときには明確な要約整理ができにくくなって,いたずらに説明を多く加える事態にも陥りかねない。本稿ではそのために多くの紙数を割いたとの印象を残した。しかしながら,その複雑な多変状況の下で,なお明確な東高西低という関係を示しえたところに,この物件費についての分析の成果があったと自負する。東高西低関係の特色が15万以上の東京圏の各市の委託料の高位に示され,それが財政力の豊かさによるものと考えて,地方財政総体に見られる東日本の財政力の強さと結びつけて見ることはできるが,そのような大局的な観点だけでは説明できない東西の大きな格差が明確に示された。さらに多面の検討が期待される課題である。
- 駒澤大学の論文
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