地方財政構造分析(続) : オイル・ショック以降の西高東低型構造の展開
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概要
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オイル・ショック以降の財政状況の激変過程での地方財政の推移を,その西高東低型構造の対応過程としてとり上げた。解明意図の期待はこの財政状況の変化が財政運営の困難度の高まる中での動きであり,それは財源に余裕のあった国家財政,地方財政のもとで形成された西高東低型の構造に何らかの刺激を与え,変容する過程であるとの説明となることにあった。しかし結論は56年度までの過程ではなお東西の開きは依然として大きく,部門によってはさらに格差を増大させていることを知った。そしてそれが,東京圏と大阪圏とを対比して見たときに,典型とも言える状態で格差が展開したのを知りえた。問題によっては東京圏,大阪圏以外の地域についてさらに検討すべきものもあり,また地方総体ではなく都道府県と市町村に分け,そして市町村を大都市,都市,町村に分け,都市についてもそれを規模別に分けて把握する必要もあろう。しかし地方財政を総体で東西に分け,その東西を特徴づけるものとして東京圏と大阪圏によって東西の性格を明らかにしょうとした意図は一応達せられたものと判断する。以上の大局的な状況展開の中にも,今後の財政の方向を考えるときには,幾つもの問題点が提示されている。地方税収入の格差増大の下で,地域的調整機能を果す地方交付税は,国庫の状況に徴してもその機能増大を期待することは困難であり,また東西格差を高めている国庫支出金の条件についても,国家財政の逼迫はその増額を期待することを許さなくなっており,国庫支出金によって保持されている西高の地方歳出の条件は早晩その維持が許されなくなろうとしている。財源としての地方債も,地方債収入に多く期した西の財政が,公債費の増嵩に処しきれずに地方債依存を低める状況がすでに始まっており,ここからも従来の西高の条件維持を阻む材料が提示されている。それでも,このような条件による地方財政構造の転換がもつと早く,この財政困難の期間に展開するのではないかとの予想に対しては,本稿が明らかにしたように,西高東低型の体質は極めて強固なものであることが証明された。したがって構造転換が近々に実現するということはないであろう。それでも方向づけはすでにできている。そしてまた大局的な大づかみな収支の区分では明らかでなかった場合でも,細分した各項目の検討の際にはそれぞれにその方向づけの兆候が呈示されており,それらの条件進展によって近い将来に基本的に問題点を検討し,困難打開を期さなければならなくなるものと考える。
- 駒澤大学の論文
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