地方「総務費」分析 : 地方財政構造解明の一環として
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
オイル・ショック以後の財政困難に際して国の財政は特例公債発行という非常手段をとった。地方財政ではそれが許されなかった。地方交付税については特別会計の借入金による交付額の確保という便法もとられたが,昭和50年台後半では国庫支出金の圧縮という重荷を負わされた地方財政運営であった。この条件下で地方財政運営の調整機能を果したものとして総務費をとらえた。もとより総務費はこの機能を期して置かれたものではない。それゆえ意図的にこの総務費の性格を明らかにする必要があった。総務費の増大過程はこの機能増大過程でもあった。道府県の総務費は地方別,府県別の格差があって機能条件の差を知ることができた。市町村ではこのような格差は小さかったが,それを特別区,大都市,一般都市,町村に分けさらにそれを地方別,府県別でとらえることで格差を見ることができ,年度状況の差で機能の所在を知りえた。国の財政では上記の外に国債整理基金への元本償還分繰入停止,各種年金への国庫負担分の年度間調整による繰入軽減という財源対策がとられ,近時の財政状況好転に即してこれらのいわゆるかくれ借金の返済が始まっている。この国の対応に準じた調整方式が地方財政運営方法の中に組み込まれていることを総務費,とくに総務管理費の解明によって知ることができた。この論稿で上記の条件が十分にとらえたというのではない。また資料上の制約があったとしても,総務費を構成する人件費,補助費,普通建設事業費については,地方総体の状況把握に止め,地域条件には全く触れなかった。当然これらの費目の地方差,府県別差はそれぞれに明らかにされるべき課題を持つ。総務管理費の人件費は退職金が支配的であり,退職金の地方条件はここに示される。また各地方団体での華麗な庁舎建設がどのように進められたかを知るてだてとして,普通建設事業費の地方状況解明は不可欠の課題でもあろう。そのような課題を残してはいるが,総務費を対象として一応の解明を果したことでこの論稿を閉じたい。
著者
関連論文
- 地方財政構造分析再論 : オイル・ショック以降の西高東低型構造の展開
- 地方「総務費」分析 : 地方財政構造解明の一環として
- 地方財政構造分析総合 : 西高東低型の構造解明のまとめ
- 町村財政構造分析続論 : 西高東低型構造の解明
- 地方交付税分析 : 西高東低型地方財政構造解明の一環として
- 国民健康保険財政分析 : 西高東低型収支構造の解明
- 物件費に見る地方財政 : 西高東低型構造解明の一環として
- 都市財政構造分析補論 : 類似団体別による西高東低型構造の解明
- 地方財政構造分析(続) : オイル・ショック以降の西高東低型構造の展開
- 金融活動の地域状況 : 西高東低型財政構造の対応要件として
- 都市財政構造分析 : 西高東低型構造形成過程の解明
- 大都市財政構造分析 : 西高東低型構造の解明
- 地方財政構造分析(続) : 西高東低型構造の解明
- 地方財政構造分析 : 西高東低型構造の解明
- 国庫支出金分析
- 租税論の複合的検討 : 転換点に立つ財政の課題(経済編,日本経済の諸問題)
- 財政調整制度について
- 租税論の複合的検討(続) : 地方税制をめぐって(1)
- 公債発行における基礎条件
- 公債発行における基本条件(続) : 昭和初期の赤字財政をめぐって