大都市圏におけるヒバリの繁殖適地と経年変化からみた存続可能性の評価
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概要
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東京都では、近年になって草原性の鳥類であるヒバリAlauda arvensisが減少しており、その保全エリアを選定するため、過去に実施された鳥類の繁殖分布調査の結果を用いて、1970年代のヒバリの繁殖適地および1970年代から1990年代にかけての繁殖地の存続可能性を推定した。解析にはロジスティック回帰分析を用いて、1970年代のヒバリの繁殖の有無、1970年代から1990年代にかけての繁殖の継続可否を目的変数とした。両モデルの説明変数には、隣接効果として隣接メッシュにおけるヒバリの繁殖の有無、土地被覆として1974年と1998年の東京都現存植生図から9つの植生区分を選定し、これらを10通りに再分類した組み合わせを用いて、それぞれ10個の統計モデルについて検討した。解析の結果、1970年代の繁殖適地の推定では、すべての草地タイプを1つに統合したモデルが選定され、隣接効果もモデルに採用された。1970年代から1990年代間の繁殖地の存続可能性の推定では、乾性草地および湿性草地を区別したモデルが選択され、各要因ともに正の影響を示した。両モデルともに比較的高い正解率およびAUCが得られたので、モデルの推定式から確率分布地図を作成したところ、1970年代には東京都において比較的広い範囲にヒバリが繁殖可能であったが、1990年代においてもヒバリが存続可能な場所は河川敷および湾岸の草地環境に偏ることがわかった。都市的な土地利用が卓越する東京都では、河川を中心とした水辺の草地環境の保全と再生がヒバリの保全にとって重要な位置を占めることが示唆された。
- 2008-11-30
著者
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