仏教におけるイメージの研究VI : 十牛図を使用したイメージ面接のための基礎研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究は、観法などの東洋的行法がイメージ療法などの臨床場面に応用の可能性を探る事を目的とした基礎的研究である。前報で十牛図を使用した創造性調査票に約一週間おきに3回の物語作成の課題をもとめた結果、調査前後に行なわれたY-G性格検査の特性項目に変化が観察された。その要因として、十牛図の一連の図版にそって繰り返しストーリーを作成する課題が影響しているものと考えられた。しかし、「調査時期による影響」や、「空白図版を含む一連の図版を使用して物語を作成すること自体の影響」などの要素について、検討すべき課題が残されていた。今回は、男女大学生および短大生30名を被験者とし、調査1で、Y-G性格検査の結果に与える実施時期の影響を検討し、調査2では、空白の図版を含む一連の図版をもとに、ストーリーを作成する課題の心理的影響が検討された。調査1の結果、性格検査の特性項目の数値は、学期中や夏季休暇中を問わず比較的変動が少ないことが観察された。調査2の結果、A図版を使用した被験者より、B図版(十牛図)を使用した被験者の方が、ストーリー内容も自己に関連する事としてとらえている者が多く、それが物語の内容やストーリー記述後の内省報告にも反映されている事が認められた。特性項目の数値ではB図版を使用した者に、より大きな変動が観察された。これらの結果は、各図版の主題が明確な図版にそって物語を作成する場合と、主題がより多義的な図版にそって物語を作成する場合の相違と思われた。また、被験者の反応内容の分析から、十牛図をもとにイメージを浮かべ、ストーリーを作成する作業は、対象喪失の体験等が問題となるケースに対し、治療的な効果が期待できるのではないかと考えられた。
- 駒澤大学の論文
著者
関連論文
- 仏教におけるイメージの研究IV : 十牛図を使用したイメージ面接のための基礎研究(追悼 山本康正教授)
- 仏教におけるイメージの研究II : 清浄道論における遍を用いた修行を中心としたイメージ面接のための基礎的研究
- イギリスの回想センターについて
- GHQ28項目版による透析患者の精神的健康に関する研究(寺岡隆先生退職記念)
- GHQ28項目版による透析患者の家族・介護者の精神的健康に関する研究
- 心理学レポートに見る大学生の関心領域
- 仏教におけるイメージの研究VI : 十牛図を使用したイメージ面接のための基礎研究
- 「仏教におけるイメージの研究」の概観 : 東洋的行法から臨床場面への応用
- 仏教におけるイメージの研究V : 十牛図を使用したイメージ面接のための基礎研究(中村昭之先生退職記念)
- 仏教におけるイメージの研究III : 清浄道論における遍を用いた修行を中心としたイメージ面接のための基礎的研究(追悼 篠原英壽教授)
- 認知療法の技法に関する試論
- 仏教におけるイメージの研究I : 清浄道論における遍を用いた修行を中心としたイメージ面接のための基礎的研究(佐久間章先生・永田幹夫先生退職記念)
- Personal Spaceの心理学的研究 : 教示の差と対人距離に関する予備的検討(櫻井徳太郎先生・山根常男先生退職記念)
- Personal spaceの心理学的研究 : 研究課題と展望(1)(萩野源一先生退職記念)
- マインドフルネスとポジティブ心理学
- 日米の学生の情動表現スタイルに関する比較研究
- 加齢心理学と被害者学
- マインドフルネスとポジティブ心理学