陽子スピンの起源は? : ハドロン反応からのアプローチ(松川貞央教授退職記念号)
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概要
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陽子スピンの起源としては、quarkの偏極、gluonの偏極、quarkとgluonの軌道角運動量が考えられる。1988年にヨーロッパのCERNで、EMCグループが偏極ミューオンビームと偏極陽子ターゲットによる深非弾性散乱の結果を発表したが、その中で、quarkが陽子スピンをほとんど担っていないことが明らかになった。これは「スピン危機(spin crisis)」と呼ばれ、このことを説明するためにいろいろな理論が提案された。この実験を引き継いだSMCグループ、そして米国SLACのE142/E143グループ(偏極電子ビーム)が、より精度の高い実験を行っているが、最新の実験結果によると、陽子スピンに対するquarkの寄与は約30%ということになっている。一方、gluonの寄与について調べる有力な手段の一つは、高エネルギー偏極陽子ビームと偏極陽子ターゲットを用いて高横運動量(high-p_T)現象を調べることである。現在のところ、この種の実験は1990年に行われた米国FNALのE704実験のみで、gluonの偏極がこの測定にかかった領域で大きいと仮定すると実験と合わないということがわかった。したがって、gluonの偏極度の大きさと関数形に制限を与えたことになる。SMCグループの次の実験(HMC)では偏極ミューオンを用いてgluonの見える反応を捕えてgluonの寄与を調べることが計画されている。また、偏極陽子や偏極重陽子の衝突によってquarkやgluonの寄与を調べる実験(RSC)が米国BNLで計画され、準備が進んでいる。これらの実験によって陽子スピンの由来についてよりくわしく理解できるようになり、「スピン危機」の解消することが期待される。
- 和歌山県立医科大学の論文
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