日本の六府県コホート研究(1966-1981)からみた牛乳、肉および魚の同時摂取と死亡
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概要
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背景:われわれは、六府県コホートデータ(1966-1981)の解析から、牛乳、肉および魚の摂取が脳血管疾患の死亡に防御的な影響を及ぼすことを見つけた。しかし、がんや他の疾患についても同様な影響があるのか未検討であった。目的:本解析の目的は、六府県コホート研究対象者における動物性蛋白質・脂肪の主たる供給源としての牛乳、肉および魚の同時摂取と主要疾患の死亡率との関係をさらに明らかにすることである。方法:解析対象は1965年12月のベースライン時に40歳〜69歳までの男女225,019人であり、がんやその他疾患(慢性の胃疾患を除く)の既往歴があるものは解析対象から除外した。研究期間中に観察された死亡数は男性23,108人、女性16,785人であった。牛乳(Dairy milk)、肉(Meat)および魚(Fish)の同時摂取(DMFと呼称)の影響をみるために、データは二値データに再カテゴリ化した。例えば、DMF(D,M,F)というのは、牛乳を週1〜3回以上、肉を週1〜3回以上、および魚を週4回以上摂取することを意味する。すなわちDMF(d,m,f)は参照群であり、牛乳を週1回未満、肉を週1回未満、および魚を週4回未満の摂取とした。死亡リスク(RR)は性、年齢、県、職業、飲酒、喫煙およびDMFを調整して比較に用いた。結果:全がんに対してDMFは弱い影響がみられ、DMF(D,M,F)におけるRRは1.09、その95%信頼区間(95%CI)は1.0-1.17であった。しかし結腸、直腸、乳房、前立腺、胃、肺、食道、胆嚢、肝、膵、子宮頸および膀胱では統計学的に有意な影響はみつからなかった。またDMFは呼吸器系疾患や外因死とは関連がみられなかった。一方、DMF(D,M,F)においては、全死因(RR=0.85,95%CI: 0.81-0.95)、脳血管疾患(RR=0.68,95%CI: 0.62-0.73)、心疾患(RR=0.86,95%CI: 0.78-0.95)、その他の死因(RR=0.83,95%CI: 0.73-0.89)となっており、これらの死因に対してDMFは防御的な影響を及ぼしたことが観察された。結論: 今回の解析結果は、このコホートにおける動物性蛋白質・脂肪の摂取とがん死亡とは強く関連していなかったことを示している。一方、欧米ほど量的に多くはない動物性蛋白質・脂肪の摂取は循環器系疾患の死亡を減らすことに役だっていたのであろう。
- 沖縄県立看護大学の論文
著者
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秋葉 澄伯
鹿児島大学
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金城 芳秀
沖縄県立看護大学
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金城 芳秀
北海道大学 院 社会医学 老年保健医学 分野
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金城 芳秀
政省通信総研
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秋葉 澄伯
鹿児島大学医学部公衆衛生
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秋葉 澄伯
鹿児島大・医・公衆衛生学
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秋葉 澄伯
鹿児島大学医学部公衆衛生学
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秋葉 澄伯
鹿児島大学医学部公衆衛生学教室
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