K. マンスフィールドの故郷への想い : -「ニュージーランドもの」における祖母像-
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
キャサリン・マンスフィールド(Katherine MANSFIELD 1888-1923)は,19歳で祖国ニュージーランドを離れ,二度と戻ることは無かった。彼女にとって,イギリスで作家になることが人生の最大の目的で,その為に故郷は切り捨てられたのである。しかし,第一次世界大戦に際し,英国軍に入隊する為に来英した弟との再会により,故郷での幸せな子供時代の記憶が彼女に甦った。その弟の不慮の事故死により,彼女は,自分の使命はニュージーランドについての作品を書くことだと考えたのだが,この様な動機から生まれた短編小説群が,いわゆる「ニュージーランドもの」である。<BR>マンスフィールドの作品の中には,祖母と孫の関係が描かれたものがいくつかある。彼女の日記や伝記から,祖母のことが大好きだったことがよく知られており,その事実が作品に反映されていると考えられる。また,作品中のバーネル(Burnell)一家は,マンスフィールド自身の家族ビーチャム(BEAUCHAMP)一家と構成が似ており,子供の頃の彼女自身,祖母,両親,姉妹を彷彿とさせ,叔父,叔母,従兄弟達との交流も描かれる。そして,作品中には,人間関係だけでなく,人間性へも向けられる彼女の鋭い洞察が見られる。<BR>作品に登場する「祖母」は,孫との関わり方により様々に描かれるが,皆,心温かい女性である。その祖母像を,「新しい服」(`New Dresses')における第一段階,「船旅」(`The Voyage')の第二段階,そして,「前奏曲」(`Prelude')「入り江にて」(`At the Bay')の第三段階に分けて検証し,その違いや共通点を分析する。
- 2008-12-10
著者
関連論文
- ビアトリクス・ポターの世界
- G.M. ホプキンズのカトリックへの道-「ナイチンゲール」を通して-
- G.B. ショー 『ピグマリオン』 の性格描写について
- キャサリン・マンスフィールドの「生」の見方 : 「園遊会」と「蝿」を通して
- K. マンスフィールド「小さな女の子」に見られる啓示
- K. マンスフィールド「風が吹く」小論 : 堀辰雄『風立ちぬ』と比較して
- E.M. フォースター : 『インドへの道』 : 融合の模索
- 爆砕処理オリーブ葉粉末による脂肪吸収および胆汁酸再吸収の促進効果
- K. マンスフィールドの故郷への想い : -「ニュージーランドもの」における祖母像-
- 『分別と多感』 / -二項対立の人間造型-
- ラットにおけるマスタードオイル摂取の生理学的解析
- 『高慢と偏見』におけるエリザベスの精神的成長