『高慢と偏見』におけるエリザベスの精神的成長
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概要
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ジェイン・オースティン(1775-1817)の小説のヒロインは,二種類に分けることができる。一方は,道徳的に優れ,社会において人がどのように振舞うべきかを示すお手本となる人物である。もう一方は,自分には人を見る目があると思い込み,その過度の思い込みによって,数々の失敗を引き起こすタイプの人物である。小説家であるだけでなく,道徳家でもあるオースティンは,後のタイプの人物達に鋭い観察眼を向け,優れた作品を残した。そのような彼女の本領を『分別と多感』『エマ』『高慢と偏見』に見ることができる。ヒロインが,軽率で放蕩な偽ヒーローに騙されることにより,日頃自負していた「人を見る目」が,いかに欠陥のあるものであったかを知る。どの作品においても,真のヒーローはヒロインが自らの過ちに気付く自己覚醒に力を貸すという共通の働きを持つのだが,三つの作品のヒーローにはそれぞれの特徴がある。言葉を変えると,ヒロインと真のヒーローとの関わり方の違いが,それぞれの作品の趣に影響を与えている。上記三つの作品の中で『高慢と偏見』が最も魅力的な作品だと思われる。なぜなら,真のヒーローも精神的な成長をするからである。それは他の二つの作品には見られない。この論文では,他の二つの作品と比較しつつ,『高慢と偏見』のヒロイン,偽ヒーロー,真のヒーローについて考察する。
- 東京農業大学の論文
- 2007-06-20
著者
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