精神遅滞児および自閉症児に対する要求行動の形成に関する研究(実践研究特集号)
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概要
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本研究では、精神遅滞児や自閉症児に対して、機能的な言語の自発使用を促すために、機会利用型指導法及びマンド・モデル法を用いて指導を行った。これらの指導法を用いて要求行動を形成していく際、先行刺激に強化機能が強い食べ物を用いる研究は多くある。しかし、食べ物は好き嫌いに個人差が大きく、時にその好き嫌いが極端に変化する、反復使用ですぐに飽和してしまう、日常的な場面では強化子として用いることは少ない等の問題点がある。そこで本研究では、自然で強い強化機能をもつと考えられる子どもの好きな遊具を強化刺激として用いた。さらに、単一の遊具で遊ぶことに飽和してしまわないように数種類の遊具を導入した。そのうえで、指導場面をより日常場面に近づけるために、遊具には不自然な物理的制限を加えずに、子どもがひとりでも遊ぶことができるように設定した。その結果、3名の対象児のうち1名は、1語文での要求から2語文での要求を行うようになった。また、指導開始以前ことばをもたなかった1名の対象児は1語文での要求が可能になった。また、1名の対象児はことばによる要求は獲得し得なかったが、身振りによる要求行動を獲得した。この結果より、強化刺激として遊具が有効であることを示唆した。また、数種類の遊具を導入したことはTrapoldのいう結果差異効果(differetial outcome effect:DOE)を裏付ける結果となった。本研究では、指導場面をより日常場面に近づけたことによって、獲得された行動は日常場面で般化しやすいのではないかと推測される。今後、この般化についての検証が課題として残された。
- 日本特殊教育学会の論文
- 1994-03-31
著者
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