聴覚障害児の語彙理解における単語分類能力と単語理解能力との関係について

概要

論文の詳細を見る
本研究は、聴覚障害児の語彙理解の特徴を明らかにしていくために単語分類課題と単語理解課題とを用いて発達的に検討することを目的とした。その結果、単語分類課題では、聴覚障害児の中学部段階においても健聴児の小学校高学年の成績にも及ばなく語彙力の低さが示された。単語理解課題においては聴覚障害児の中3段階でも健聴児の小2段階に及ばず、聴覚障害児の語彙力の低さがより顕著に示された。単語理解課題の成績に基づいて単語分類課題をみた場合、両群ともに単語理解課題の成績の高いグループほど形態に基づく反応が減り、意味に基づく反応が増えるという傾向が示され、語彙力に劣る者は、ただ単に単語の意味がわからないだけではなく単語の形態的特徴に依存しているという傾向が明らかにされた。今後の指導にあたっては、聴覚障害児の言語的素地を豊かにしていくと同時に一語一語を確実におさえながら、単語と単語の意味的機能に着目し、語彙の概念的充実をはかっていくことが必要であると思われる。
日本特殊教育学会の論文
1982-12-30