精神薄弱児の成功の期待に及ぼす失敗経験の影響 : 特に社会的強化の感受性を中心として
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究は、失敗経験後の精薄児の成功の期待における個人差に注目して、特に社会的強化の効果の相違を検討することを目的として実施された。そこで、次の仮説が設定された。(仮説)失敗経験後、成功の期待をより低めた精薄児(DMR群)は、それをより高めた精薄児(IMR群)に比べて、おとなからの支持や承認に対してより敏感に反応し、そのために高い遂行をもたらすであろう。被験者として、実験的に操作した失敗後、確率課題の遂行過程で成功の期待を高める反応傾向を示した精薄児8名と、それを低める反応傾向を示した精薄児8名を対象とした。被験者は、いずれも小・中学校の特殊学級に在籍する家庭在住精薄児であり、主に家族性精神薄弱であった。実験は、単純な飽和課題であるマーブル入れゲームが行なわれ、その遂行中に実験者から言語的強化が施された。その結果、(1)DMR群の方がIMR群に比べて、より長い遂行時間を示し、より多い遂行量を示し、許容マーブル最大数の使用の者の割合いが高かった。(2)誤反応数では、DMR群の方がIMR群に比べて、より少なかった。(3)Part間の比較において、DMR群がPart IからPart IIにかけて、遂行時間および遂行量を増大させるのに対して、IMR群は、逆にそれらを減少させる傾向を示した。こうした結果から、(仮説)はほぼ検証されたといえる。そしてし以上のような結果は、成功の期待に関して、失敗経験-特におとなの負の言語的強化-に対する精薄児の感受性の個人差が認められることを知らせる。しかしながら無強化群の設定による社会的強化の更なる検討や実験者効果の検討などが必要であり、それらは今後の課題として残された。
- 日本特殊教育学会の論文
- 1979-03-15
著者
関連論文
- 発達14(337〜348)(部門別研究発表題目・質疑応答・討論の概要)
- 臨床・障害1(801〜808)(部門別研究発表題目・質疑応答・討論の概要)
- 普通児および精神発達遅滞児における自己意識に関する比較的研究
- 851 精神発達遅滞児における集合化の論理操作と言語処理との関係(臨床・障害6,臨床・障害)
- 普通児及び精神遅滞児の言語媒介過程 : 数概念達成場面を中心にして
- 精神発達遅滞児の課題解決過程における反応言語化の効果について
- 347 選択課題における課題解決方略の発達に関する研究 : 普通児の言語報告を中心とした検討(2)(発達14,発達)
- 精神遅滞児の確率学習における問題解決過程の発達的変化について
- 精神遅滞児における問題解決方略の発達
- 精神薄弱児の動機づけに関する研究 : 成功の期待に関する動機づけ仮説の実験的検討
- 精神薄弱児の成功の期待に及ぼす失敗経験の影響 : 特に社会的強化の感受性を中心として
- 精神発達遅滞児における問題解決過程の発達的変化
- 801 精神薄弱児の問題解決過程に関する発達的研究(1)(臨床・障害1,研究発表)
- 精神薄弱児の動機づけに関する研究 : 概念と今後の方向