精神遅滞児の確率学習における問題解決過程の発達的変化について
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概要
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本研究の目的は,精神遅滞児の問題解決過程における発達的変化について,特に,課題解決方略に注目することにより認知論的枠組みから検討することであった。 被験児は,正常児群48名,精神遅滞児48名の合計96名であった。正常児群の年齢水準は,保育園児,小学校2年生,5年生であり,精神遅滞児群のそれは,MA4才代,MA7才代そしてMA10才代であった。両群の被験児は,各々,年齢水準別に2条件群に8名ずつ割り当てられた。実験課題として,特定の位置刺激への選択反応にランダムな間歇強化を施す三者択一の位置弁別課題が用いられた。強化スケジュールの違いによって,66%課題と33%課題の2種の課題が区別された。実験は,2つの問題解決セッションからなり,2種の課題と組み合わされて以下のような条件群が設定された。その1つは,先行セッションで66%課題が与えられ,報酬確率及び報酬位置の変化した後続セッションで33%課題が与えられた。他のは,先のと逆であった。第2セッションでは,正反応数の他に,課題解決方略,パタン反応数,そして位置固執反応数などの測度を用いて,第1セッションでの課題解決の仕方の認知論的側面からの検討が行われた。 正常児群の主な結果は次の通りであった。 年少児は,セッション移行直後に正反応数が最も低く,固執反応数が最も高かった。試行の進むに応じて,正反応数を著しく増大させた。Win-stay, Lose-stayの解決方略が他に比べてより多かった。年中児は,固執反応数が極めて低く,試行を通じて正反応数の変化が示されず,Win-shift, Lose-shiftが多かった。そして,位置交替パタン反応数が最も高かった。年長児は,年中児と同様に,固執反応数が極めて低く,試行途中での解決方略の変換が示された。 精神遅滞児群の主な結果は次の通りであった。 年少児(MA4歳代)は,固執反応数が最も高く,正常児群の年少児と同程度であった。Win-stay, Lose-stayが最も多かった。年中児(MA7歳代)は,固執反応数が極めて低かったが,試行途中でWin-stay, Lose-stayを増大させる傾向を示した。年長児(MA10歳代)は,解決方略の変換が示されず,後期ブロックでその反応傾向が認められた。 以上の結果から,報酬と連合した手掛りおよび非連合の手掛りとの相互の論理的関係の把握といった認知発達傾向が論議された。そして,精神遅滞児の問題解決の仕方における特異性について,注意水準あるいは記憶負担などが指摘された。
- 日本教育心理学会の論文
- 1980-03-30
著者
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