511 制御対象のエネルギ収支に着目した機械力学系の最適制御 : 第1報,基礎理論

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最適制御理論が生まれてから半世紀を経たが,現在でも随伴変数と状態変数についての連立微分方程式を解かねばならない状況は変わらず,最適制御則を解析的に導くことは容易ではない.そのため様々な数値探索的方法や椎論的手法が工夫されてはいるが,依然として見通しの良い解析的手法の必要性は変わらない.このような背景から,本論文では,従来とは異なる手法で主として機械力学系システムの非線形系を含む比較的広範囲の最適制御問題を解析的に解く方法を提案する.入力に関する評価関数を制御装置から制御対象に伝達されるエネルギとし,これに制御性能を表現する関数gを加えて全体の評価関数とする.さらに付帯条件として制御対象の完全なエネルギ収支の式を加えて汎関数とする.こうすると汎関数の被積分関数Lは制御変数に関して1次式となるので,制御対象が線形,非線形を問わず汎関数を最小化する条件から微分方程式を解かずに最適制御則を解析的に導くことができる. L=κ{u^Tq+ν^Tq-q^TM(q)q-d^T(q,q)q-e^T(q,z)q}+g(q,q,q)+ru^Tq (A1)ここで,κは未定定数である.右辺の{ }内は,制御対象の全パワー収支式でありエネルギ保存則を満たし常にゼロである.従ってLの積分を最小化する条件は,評価関数も最小化する. uが最適制御であるための必要条件は,次のオイラーの方程式を積分し積分定数をゼロとした次式から得られる. ∫(∂L)/(∂q)dt-(∂L)/(∂q)+d/(dt)((∂L)/(∂q))=0 (A2) 上式から制御即が次のように求まる. u^T=1/(κ+γ)[-κ{ν^T+q^T d/(dt)M+∫∂/(∂q)(q^TMq)dt}+κ{∂/(∂q)(d^Tq)-∫∂/(∂q)(d^Tq)dt}+κ(e^T-∫∂/(∂q)(e^Tq)dt)+∫(∂g)/(∂q)dt-(∂g)/(∂q)+d/(dt)((∂g)/(∂q))] (A3) このように,本手法はJを最小化するqとuの関係を直接導くことができるため,従来のように2点境界値問題を最適性の原理を用いて解くプロセスが不要になる.上式の第1行は外力vと慣性のq依存性に対する制御,第2行はコリオリ力や遠心力やダンピング力に対する制御,第3行はポテンシャル力とそのq依存陸および外力zに対する制御,第4行は評価関数を低減させる制御でありそれぞれ意味が明確である.式(A3)には未実行の微積分項が含まれているが,全ての外力と状態量の検出あるいは推定が可能とすればこれらの実時間での実行は可能である.この汎関数には未定定数κが含まれるため,汎関数を最小化する条件は最適制御であるための弱い必要条件となる.しかし後半の具体例により工学的には十分実用的で有用あることを示す。また第2,3報により本手法は非線形系、非ホロノミック系への適用が可能であることを示す.
社団法人日本機械学会の論文
2006-08-06

511 制御対象のエネルギ収支に着目した機械力学系の最適制御 : 第1報,基礎理論

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