小学生における性役割の認知
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概要
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それぞれの性に期待される役割(性役割)を取ることは,児童期の子どもの発達課題の1つであるとみなされているが(Havighurst,1953),社会の変化に伴って,これまでのように性に応じた役割を男女それぞれに固定的に求める傾向は弱くなりつつあると思われる。しかし,小学生を対象に,どのような時に男(女)らしくしなさいといわれたかについて調べたところ,依然として男女に対して異なった役割が強く期待されていることが示された(南,1984)。そして,特に女子の場合,小学校の4年生頃から,自らに期待される役割が,男子に期待される役割よりも社会的な束縛が強く,不自由であることに気づき(南,1984),自らに期待される性役割を受容し,それを遂行する上で大きな葛藤が存在しているようである(南,1980)。このように男子の場合は,社会から期待されていると認知した性役割をそのまま受け入れ,実際にそれを行動として遂行していく上で大きな矛盾はなく,性役割の認知と性役割行動は一致しやすい状況があるが,女子の場合は,社会から期待されていると認知した役割を,そのまま受容することに大きな葛藤がみられ,性役割の認知と性役割行動がストレートに結びつかないことが多いと思われる。したがって,柏木ら(1973)も指摘するように,性役割の認知のレベルと,実際どのような性役割行動を示しているのかという性役割行動のレベルとを区別して考えることが必要である。ところで,わが国において,青年期を対象にした性役割の研究は比較的多くみられるが,小学生を対象とした研究は非常に少ない。その中でも,性役割の認知という側面に焦点を当てたものになると,東ら(1973)の研究の他にはみられないようである。東らは,男性または女性の特性と考えられる22の行動特性を取り上げ,それらの行動を取るのが男であるか,女であるかについて,小学校の2年生,4年生,6年生,中学校の1年生,3年生に判定させている。その結果,性役割の認知が学年の上昇に伴って成人のパターンに近づくことや,性役割の認知の次元として,外面的事実→個人的行動→内面的特性→社会的行動の順に認知されることなどを見出したと報告している。しかし,このような方法では,どのような行動に男女差がみられるかについて,子どもに判断させているに過ぎず,子どもの性役割についての認知を調べる方法としては適切でないと考えられる。なぜなら,性役割とは,現実に存在する行動上の性差ではなく,社会が男女それぞれに期待する行動特性のことをいうからである。そこで,本研究では,56の特性を取り上げ,各特性が男女それぞれにどの程度望ましいかについて,5段階評定させることによって,性役割の受容に男女差がみられるようになる段階の小学生が,どのような特性を性役割として認知しているかについて明らかにしようとした。さらに,性役割の認知にみられる学年差ならびに,男女差についても検討を行なった。
- 神戸親和女子大学の論文
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