繊維製品の汚れに関する研究(第5報) : 樹脂加工綿布の汚染性および洗浄性
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
樹脂加工を施した木綿布は,一般に汚れにくく付いた汚れも洗浄しやすいと称されているが,その実態については疑念をもつて来たので,前報までに準じた人工汚染の方法により汚染性を比較し,次にそれらの洗浄試験を行つて洗浄性を検討した。得られた諸結果のなかで主要なものを次に列挙する。本報告には,直接,汚染に関連した実験結果だけを述べたが,これらの原因についてはさらに検討を要する点も多く,引続き実験中であり,別の機会に報告を行う。1)市販状態の加工布は,四塩化炭素分散の人工汚染(S_1)によつては,それらの未加工布とほぼ同程度の汚染性を示すが,水分散の人工汚染(S_2)によると未加工布よりもずつと汚染されやすくなる。この一因として,浸漬による水性汚染の場合には分散剤や撥水剤の併用が却つて汚染性を高めるものと認められる。2)市販状態の加工布を汚染したものは,いずれの汚染方法によつた場合にも,それらの未加工布に比べ,蒸溜水洗浄による洗浄性が著しく低下する。四塩化炭素分散標準汚染液型(S_3)に水分散汚染液(S_2)におけると同量の非イオン活性剤を添加して人工汚染に使用したもの(S_1)でも,この傾向は全く同様である。3)木綿布の樹脂加工剤として普通に用いられている各種の樹脂原液を,それぞれ単独に同量あて使用して樹脂加工を施した試料によると,次のことが認められた。i)アクリル系樹脂による加工布は未加工布に比べ,S_1,S_2どちらの汚染方法による場合にも汚染性が大きく,なお,付着した汚れは,水洗浄(W_1)ではもちろん石けん水洗浄(W_2)によつても著しく洗浄し難い。ii)参考として同じく単独で用いた撥水剤だけによる加工布は,汚染性についてはアクリル系と同様の傾向を示すが,汚れは石けん水洗浄によつては未加工布程度に落ちる。ただし,この場合にもS_2汚染により水洗浄を行つた際の洗浄率はかなり低い。iii)その他の,尿素・メラミンおよびそれらの誘導体を主成分とする樹脂加工布は,汚染性は未加工布よりもやや高いか同程度であり,水洗浄率は未加工布よりもやや低下し,石けん水洗浄率は未加工布とほぼ同程度であるが,樹脂型相互間における差異はあまり顕著ではなく,エチレン尿素系によるもの(R_4)が僅かに高い数値を示している。4)前項の場合,いずれもS_1汚染のほうがS_2汚染よりも汚染性が大きく,従つて市販加工布において汚染率がS_1<S_2であることは,浸透剤その他の配合成分による影響と考えられる。石けん水による洗浄のほうが,いずれも水だけによる洗浄率よりは高い。付着樹脂量と汚染に関する性質との関連性は明らかではないが,同一樹脂の場合における加工布の防皺性との関係をみると,防皺性の高い(従つて付着量も多いと考えられる)状態のものは,概して洗浄性とくに水洗浄率が低下する傾向を示す。5)最も普通に用いられているメチロールエチレン尿素系(R_4)による樹脂加工条件と,加工布の汚染性・洗浄性との間には,次のような諸点が認められた。i)触媒の量を増加しても,少くとも加工布の汚染・洗浄に関しては影響がほとんどない。ii)キュアリングの時間を長くしても,汚染性にはほとんど変化がないが,汚れの水洗浄率(とくにS_1汚染の場合)はかなり低下する。しかし,反面に石けん水洗浄率は次第に上昇を示し,未加工布よりも高くなる。iii)ソーピングの有無は汚染性については最も大きな要素となり,S_1,S_2いずれの汚染方法による場合にも,ソーピングを施すことにより汚染性が高まる。しかしながら,汚れの洗浄率はソーピングを施した場合のほうが高く(とくにS_1汚染の場合),繊維表面に付着状態の不要定な樹脂成分が汚染に関与する効果が大きい。ただし,キュアリングが進みすぎるとこのようなソーピングの効果も薄れてゆく。
- お茶の水女子大学の論文
著者
-
渡邊 正子
Laboratory Of Textiles Faculty Of Home Economics Ochanomizu University
-
松川 哲哉
Laboratory of Textiles, Faculty of Home Economics, Ochanomizu University
-
松川 哲哉
Textile Laboratory Faculty Of Home-economics Ochanomizu University
関連論文
- 繊維製品の汚れに関する研究(第5報) : 樹脂加工綿布の汚染性および洗浄性
- A New Laundering Method Using Aqueous Solution of High-polymer for Coating of Soiled Fabrics and Followed by Water Laundering
- 繊維製品の汚れに関する研究(第7報) : 樹脂加工布の汚染性および洗浄性
- 繊維製品の汚れに関する研究(第6報) : 澱粉糊付綿布の酵素・石けん併用洗浄
- 纎維製品の汚れに関する研究(第4報) : 汚染糊付布の洗浄性
- 纎維製品の汚れに関する研究(第3報) : 糊付布の汚染性
- 繊維製品の汚れに関する研究-3・4-
- 纎維製品の汚れに関する研究 第2報 : 水分散媒人工汚染液による汚染
- 繊維製品の汚れに関する研究 第I報 : 各種繊維による汚れ易さの比較