簡便なEE(Expressed Emotion,EE)評価に関する検討 : 評価者間信頼性と質問紙によるEE評価の妥当性
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
背景:統合失調症患者の経過と再発に関る家族の影響を調べるために始められた家族の感情表出(Expressed Emotion,EE)研究は、世界各国で追試研究が行われ、すでに確立したものになってきている。EEの評価方法には、半構造化面接であるCFI (Camber well Family Interview)が一般的であるが、短時間の面接で評価するFMSS (Five Minutes Speech Sample)や自己記入式の質問紙など簡便な方法によるEE評価についても検討されるようになってきている。簡便な方法によるEE評価が可能になれば、広域調査やさまざまな臨床場面に用いることができる。そこで、障害のある子どもの家族のEE評価について、CFIと妥当性がしめされているFMSSにおいて、すでに認定を受けている評価者と新たに訓練した評価者との間の信頼性と、自己記入式の質問紙であるLEE (Level of Expressed Emotion)、FAS (Family Attitudes Scale)など簡便な方法によるEE評価についての妥当性を検討した。結果:FMSSをそれぞれ評価した評価者間の信頼性の相関係数が0.40でcut-off pointをずらした場合0.65と高くなった。また、簡便な質問紙によるEE評価について、LEEはFMSSの評価カテゴリーの中の「批判」と、FASは「批判」「不満」とEE評価の高低で有意な差が得られた。考察:認定された評価者と新たに訓練した評価者との間の満足すべき信頼性を得ることができたことから、日本でのFMSS評価の訓練の有効性が示された。また、FMSSを基準として、LEEおよびFASの妥当性が示された。また、障害のある子どもの家族のEE評価は、日本人の文化的要素を考慮しながら、注意して評価する必要性が示された。また、質問紙を用いる際は、妥当性の示されているカテゴリーの評価であることを認識しながら用いる必要がある。簡便な評価方法は、その信頼性と妥当性が厳密に検討され使用なければならないが、さまざまな臨床現場においてEEの応用を可能にするため、今後も発展していくと考えられる。
著者
-
三野 善央
大阪府立大学社会福祉学部精神保健学
-
米倉 裕希子
近畿福祉大学
-
三野 善央
岡山大
-
三野 善央
大阪府立大学
-
三野 善央
大阪府立大学人間社会学部社会福祉学科
-
三野 善央[他]
大阪府立大学
関連論文
- 認知症高齢者の家族の感情表出研究 : -批判的コメントと認知症状-
- 在宅生活をしている統合失調症患者のWHOQOL-26尺度に影響を与える要因の検討
- 統合失調症患者の生活の質(QOL)に関する文献的考察
- 我が国の社会医学における因果関係論の構築を目指して
- 後天性水俣病の判断条件に関する医学的検証
- 認知症高齢者の家族の感情表出研究--批判的コメントと認知症状
- 家族の感情表出と双極性障害 : 日本でのコホート研究
- 高齢者の感情表出(EE)と心理教育 (特集 老年精神医学とサイコエデュケーション)
- 統合失調症における家族心理教育の医療コスト分析(里見賢治教授退職記念号 社会福祉学部統合再編記念号)
- 精神科治療におけるEE(家族感情表出)の意義
- 老人気分障害患者に及ぼす家族の感情表出の影響に関する研究
- 精神衛生(座長のまとめ,第67回日本産業衛生学会)
- 注意集中障害児の経過に関する研究 ―日常・学校生活への適応について―
- 障害のある子どもの家族支援 : -児童デイサービスを利用している家族のEEとQOL-
- 統合失調症における家族心理教育の医療コスト分析
- 若い世代における精神障害者に対する偏見の比較と関連する要因
- 精神障害者に対する偏見減少のための教育的介入の効果 : 高校生における教育的介入の評価
- 高校生における精神障害者への偏見減少のための教育的介入の評価
- P2012 職場の心理社会的ストレスを有する中高年労働者において就寝前飲酒が不眠の有症リスクに与える影響(一般演題:ポスター,地方の時代の産業保健,第79回日本産業衛生学会)
- B114 職場の心理社会的ストレスと不眠の関連 : 仕事の要求度 : コントロール(JDC)モデルと努力報酬不均衡(ERI)モデルを用いた横断研究
- 職場における主観的ストレス度の変化が精神の健康状態に与える影響
- 中国における統合失調症患者の家族心理教育の効果評価
- 統合失調症における家族心理教育の費用便益分析
- 簡便なEE(Expressed Emotion,EE)評価に関する検討 : 評価者間信頼性と質問紙によるEE評価の妥当性
- 職業がんとイニシエーター・プロモーター
- 職場ストレスが精神的健康度に及ぼす影響に関する前向き研究
- F305 原因確率とAction・Lnaction・Causal lnference
- 医学における因果関係の推論 : 意思決定
- シリカ曝露と食道がん・胃がんに関する症例対照研究
- 喫煙とメンタルヘルスとの関連について : 職域における調査より
- 職場における精神の健康度の変化に影響を与える要因
- J306 粉じん曝露およびじん肺と肺がんの関連に関する症例対照研究
- 23. 耐火煉瓦工場集積地域における肺癌の疫学調査について (平成10年度中国四国合同地方会)
- 疫学から見た作業関連性疾患と職業病:再論 (話題)
- 英国イングランドの精神障害者ケアマネジメント(ケースマネジメント)
- 家族心理教育の現状と課題 (特集 精神障害リハビリテーションの援助技術・プログラムはどこまで進んだか:研究成果のレビュー)
- 岡山県における保健所精神保健福祉活動と地域精神保健福祉センター機能
- P330禁煙支援・事例報告 その2
- P329禁煙支援・事例報告 その1
- 福山市内小学校での小型球形ウイルスによる胃腸炎集団発生事例
- 深夜勤務中に行う健康診断の有用性
- カンバウェル家族面接による家族感情表出(Expressed Emotion, EE)評価の信頼性に関する研究
- 日本における双極性障害の家族心理教育の医療費への影響
- 障害のある子どもの家族心理教育の効果 : 家族のQOLとEE
- 認知症の家族心理教育--感情表出(EE)研究の立場から (認知症の人と家族を支援する) -- (さまざまな取り組み)
- 精神保健福祉サービスにおける根拠に基づく実践 (evidence-based practice) と疫学方法論
- 統合失調症における家族援助 (統合失調症) -- (統合失調症に対する治療の現状)
- 日本精神障害者リハビリテーション学会第13回大会基調講演:精神障害者リハビリテーションと根拠に基づく実践 (日本精神障害者リハビリテーション学会第13回大会報告)
- 家族の感情表出と精神障害 (特集1 家族について研究する--精神障害と家族)
- 統合失調症治療における家族支援のあり方 (〔こころの科学〕創刊20周年記念増大号) -- (特別企画 統合失調症)
- 障害をもつ子どもの家族の感情表出研究
- 精神科リハビリテーションと家族支援 : 家族のノーマライゼーション
- これからの精神障害者地域ケア--脱施設化のために (特集 精神障害者の地域生活支援--在宅福祉サービスの充実と市町村の役割)
- メンタルヘルスの広場 家族感情表出(EE)研究の発展と家族心理教育
- 英国イングランドのメンタルヘルス (特集 世界のメンタルヘルス)
- 喫煙と職場ストレス, メンタルヘルスとの関連
- 不況、うつ病そして自殺 (特集 うつの時代を生きる)
- 喫煙と職業ストレス, メンタルヘルス
- 分裂病と家族のEE(感情表出)--家族は援助を求めている (認知行動アプローチ--臨床心理学のニューウェーブ) -- (精神分裂病)
- 第3回 ストレスと健康 : a) ストレスと心の健康障害 (仕事と職場のストレス)
- 精神科休日相談センターおかやま (ソフト救急) における早期介入の試み
- 主観的職場のストレスと精神的健康との間の関連についてハザードモデルの観点から
- 障害のある子どもの家族心理教育の現状と課題