ルーメン内微生物による牧草窒素の利用に関する研究 : 1.牧草蛋白質のルーメン内分解についてのin vitro測定法
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概要
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本報告の目的は,放牧時の牧草摂取に伴う牧草蛋白質のルーメン内分解をin vitroで測定する方法を発展させることにあった。そのin vitro方式は材料に牧草の凍結乾燥標品を用い,これをルーメン内容物の二重ガーゼ〓液と共に改良注射管中で短時間(2時間)培養するもので,人工唾液の添加を必要とせず,従って炭酸ガス通気も省ける簡便な方式である。生草を凍結乾燥,熱風乾燥および天日乾燥して培養材料とし,2時間培養によるアンモニア生成量を比較すると,凍結乾燥草からの生成が最も大きかった。そのアンモニア生成量を材料の窒素成分量から計算すると,材料中の非蛋白態窒素画分からのみならず純蛋白画分からも派生すると計算され,牧草蛋白質の分解が証明された。一方,熱風および天日乾燥材料では,この様な短時間培養では,蛋白画分の分解は明確でなかった。in vitro法に用いる材料としては,凍結乾燥草が生草に最も近似していると結論された。in vitroにおける培養は,更に,乾物当り粗蛋白質(CP)含量14.4-24.4%,非構造性炭水化物(TNC)含量9.5-19.6%の幅で含有する凍結乾燥草6試料を用いて行われた。この場合,牧草のCP含量と生成されるアンモニア量との間に正の相関関係が認められた。生成されたアンモニアの一部はルーメン内微生物に再利用されるが,その際に食餌の炭水化物がエネルギー給源となる。牧草のみを摂取する場合,牧草窒素成分の分解(アンモニアの生成)の速度はかなり速いので,これに対応するルーメン内の炭水化物代謝は易分解性のTNC由来のものによるとみられる。牧草中のCP含量とTNC含量は負の相関を示し,CP/TNC比とアンモニア生成量は正の相関関係を認めた。低TNC高CP草では微生物に再利用されるアンモニア量が少なく,アンモニアの過剰の蓄積がおこると受取られた。VFA生成量と草のCPまたはTNC含量とは明確な関係は認められなかったが,これはTNC画分からの生成と共に高CP草の場合には蛋白質由来のVFA生成量が増す故であろう。このin vitro法の特徴は短時間培養にあるが,アンモニア生成の経時的推移からみて,牧草の易分解性窒素部分は2時間以内に分解的に利用されてしまう実験事実に基いて,培養時間を2時間に定めた。放牧動物は牧草を少量づつ度々摂取しており,その際,牧草蛋白質はルーメン内で逐次容易に分解されるので,摂取された窒素成分の変化は短時間発酵の繰り返しとみることができる。これらの観点から放牧における牧草窒素成分のルーメン内消化をin vitroにおいて追跡する場合,短時間の培養法が適当であると指摘できた。また,短時間培養である為に培養中のpH変化は少なく,緩衡液を必要としなかった。
- 日本草地学会の論文
- 1984-01-31
著者
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