草食動物に摂取されたラジノクローバ・サポニンの追跡
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概要
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草食動物に摂取されたラジノクローバ・サポニンがいかなる推移をたどるかを明らかにするため,ラジノクローバより分離,精製したサポニンを合成飼料に混じて,うさぎに投与し,そのサポニンの糞と体内への移行を定量的に測定する試験を設定した。2頭の雄うさぎをそれぞれ糞尿分離式の代謝ケージに収容し,サポニンを含まない合成飼料(対照飼料)で18日間飼育し,その末期6日間の糞と尿を集めてこれらを対照とした。続いて6日間対照飼料とサポニン含有飼料の等量混合物(1日1頭当りサポニン525mg)を与え,更に6日間サポニン含有飼料のみ(1日1頭あたりサポニン1050mg)を与え,糞と尿をそれぞれ6日間採取した。糞は乾燥粉砕し,エチルエーテルによってサポゲニンを抽出し,次に50%熱エタノールによってサポニンを抽出した。これらのシリカゲルの薄層によるクロマトグラムをデンシトメトリーによって定量した。尿についてはエーテル抽出,1%NaHCO_3溶液洗滌によってエーテル可溶の中性物質群,エーテル可溶の酸性物質群および水溶性物質群の3分画に分け,これらについて更に酸加水分解処理をおこない,薄層クロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフィーによって比較した。えられた結果は次の通りである。。1)うさぎのラジノクローバ・サポニンを1日1頭当り525mgと1050mgを摂取させた場合,それらの86〜90%が消化管内を通過するうちに消失することが判明した。2)消失したサポニンのうち,サポゲニンとして糞に現われる部分は極めて少なく,1日当り6〜8mgであって,残りは更に消化管内で分解されるか体内に移行することを示唆した。3)サポニン摂取動物の尿のエーテル可溶の中性分画にはラジノクローバ由来のサポゲニンを検出できなかった。4)尿のエーテル可溶の酸性分画の薄層クロマトグラムにおいては,対照尿には見られないLiebermann-Burchard反応陽性の4つのスポットが出現した。したがって,これら4物質はラジノクロバ・サポニン由来の代謝物質と考えられた。しかし,この分画のガスクロマトグラムにおいて,indexとして加えたサポゲニンTMSエーテルのピークの周辺に,これら物質に由来するピークを見出すことができなかった。5)尿の水溶性部分を加水分解してサポゲニンの存在をしらべたが,サポゲニンは検出されなかった。これはサポニンそのものの吸収はおきないことを示唆した。更にこの加水分解物中には,対照尿のこの分画にくらべると,薄層クロマトグラム上に,50%硫酸加熱によって黒化するスポットが多量に検出された。
- 1978-04-30
著者
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