菜豆類の乾燥特性に関する実験的研究 : 手芒の人工乾燥について
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概要
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豆類に関する農作業の機械化は近年著しい進展をみせているが,その最大の難点は収穫作業にあるとされている。慣行では収穫,脱穀両作業は全作業時間の35.1%を占め,そのほとんどが人力によっているため,これらの機械化は特に重要課題として最近各方面でその解決策が研究され,豆類についての機械化一貫作業体系の実現も近い将来にあり,として大いに期待されている。この収穫作業の機械化に伴って,必然的に多水分子実の乾燥が問題になってくる。すなわち乾燥した子実は機械収穫の際の衝撃その他の原因のため,莢がはじけて脱粒してしまうため子実が高水分の間に収穫しなければならない。したがってこれらの高水分子実は必ず人工乾燥する必要がある。また,人力で刈り取る場合でも悪天候のため集積することができずによう積みのまま放置せざるを得ない状態となり,ついに変敗してしまうことが往々にして起きる。特に菜豆類においてこれらの被害が多く見られる。これらについても人工乾燥の実施である程度損害を防止することができる。以上のごとく豆類の人工乾燥の必要性は認められてはいるが,現在までこれらについての資料は皆無の状態に近く,籾,小麦等に比較して非常に遅れていると言わざるを得ない。このような現状にかんがみ,豆類の中で特に菜豆類の手芒を選び,その乾燥特性を実験研究し,乾燥機の設計,運転上の基礎的資料をうる目的で本研究を実施した。研究項目は初期含水率,熱風温度,風速等が平衡含水率,乾燥定数,形状係数などに与える影響を主体として,さらに蒸発の潜熱,テンパリング乾燥,層の厚さ,通風抵抗などの諸点について実験考察を試みた。これらの結果を要約すれば次の通りである。1.比較的層の薄い場合初期含水率56.20〜19.06%,熱風温度30〜70℃,風速0.07〜0.26m/s,絶対湿度0.007〜0.017kgH_2O/kg dry airの範囲で実験を行なった結果,著名な減率乾燥の基礎式(M-M_e)/(M_0-M_e=ae^<-ko>は非常によく適合する。ただし時間θが1時間より大きい範囲においてである。ここにM_o=初期含水率,M_e=動的平衡含水率,a=形状係数,K=乾燥定数とする。a)動的平衡含水率M_eについて風温40℃一定とし初期含水率M_0を変化させて行なった実験の結果から,計算によってM_e,を求めたが,M_eはM_0の高低によってこうむる影響は少なく,次の近似式で示される。M_e=0.064M_0十11.76しかるに熱風温度の高低に対しては当然のことながら大きな影響をうけ,次の近似式で示される。M_e=α-0.324tただしα=26.5〜28.5,t=熱風温度℃なお上式において初期含水率が高い時にはαを大,低含水率の時にはαの小なる値を用いる。これより動的平衡含水率の概略の値を求めることができる。実験の範囲では風速の影響は無視できる程度と考えられる。b)乾燥定数Kについて乾燥定数Kは初期含水率および熱風温度の関数として次の実験式で示される。K=0.9341^<M_0+5.47>×t^<(M_0-18.66)×0.0204,c)形状係数αについて,形状係数αはM_0が小さい時および大きい場合に比較的大なる値をとりM_0が30〜40%の範囲では0.72〜0.73で最小となる。また,熱風温度tに対してはtが30℃のとき比較的大きな値となるがその他の温度では余り大きな変化を示さない(第4.12図参照)。d)含水率17.65%まで乾燥するのに要する時間についてM_0,tが定まるとa),b),c)などにより近似式および線図を利用してM_e,K,aが求められ,任意の含水率Mまでの乾燥所要時間θを求めることができるのであるが,Mが17.65%になるまでの乾燥時間θ_17.65については近似式θ_17.65≒ct^<-2>により求めることができる。ここにCは初期含水率によって定まる定数で,実験値を整理して両対数グラフの両軸に風温t℃とθ_17.65をとってプロットすると初期含水率M_0に応じてほぼ平行な直線群が描かれる(第4.30図参照)。e)損傷粒の発生について乾燥による亀裂の発生は41年度産の古い豆を加湿供試したものについて数多く発生し,風温が高くなるほど,また初期含水率の少ないものほど,多発する傾向を示した。いずれも水分の移動による水分分布差が大きい時点での発生と考えられる。これに反し42年度産の新鮮な試料においては亀裂の発生はほとんどみられなかった。41年度産のものに亀裂が多発したのは枯渇した子実の組織に吸湿処理を施したことが最大の要因と考えられる。f)発芽率について風温45℃以上の連続乾燥を行なった場合には,発芽率が著しく低下する,種子用の子実の乾燥においては風温45℃以下に保つのが安全であると考える。しかしテンパリング乾燥を行なったものは60℃の風温でも88%の高い発芽率を示した。g)テンパリソグ乾燥についてテンパリング時間は3〜5時間が適当であって,5時間以上テンパリングを実施してもそのために次の乾燥工程における乾燥速度の向上は大きく期待出来ない。Kθ≦0.3を満足する通気時間θを経過した直後からテンパリソグを開始するのがよく,Kは初期含水率および風温の関数としてb)項の近似式で示される値を用いればよい。テンパリング乾燥のi番目の乾燥工程中における蒸発水分量をM_iとするとM_iと(i+1)は両対数グラフの上で直線的関係を示ずのでi=1のときの蒸発水分量をM_1とすると次の近似式が得られる。[numerical formula]ただしCは定数定数Cはテンパリングの方式によって定められる,すなわちある乾燥機で定められた風温のもとでテンパリング乾燥を実施した結果から,初期含水率の異なる場合の各工程についても第1工程のM_1がわかれば,大略の蒸発水分量を求めることが出来る。したがってあと何回テンパリングを繰り返えせば所望の含水率とすることができるかを推定することができる(第4.55図参照)。h)蒸発の潜熱について手芒を高含水率から乾燥してゆく場合に22%の含水率付近までは自由水におけるときと同じ蒸発の潜熱と考えうるが,22〜17.65%の間の乾燥では自由水の蒸発の潜熱の1.034倍の熱量を必要とする。2.層の厚い場合についてa)含水率について層高による含水率の差は予想以上に大きく乾燥初期では上層部に吸湿の現象が認められ,上下層の含水率の差は特に大である。しかし時間の経過とともにその差が減少し,層高15cm,風量1m^3/sec・tonのときは10時間後に4%前後の含水率差となる(第5.10図)。同じ条件で風量が1/2,すなわち0.5m^3/sec・tonに減少すると含水率差は7%近くまで増加する(第5.1表)。層高10cm程度までは湿度による含水率差はそれほど顕著ではない。すなわち含水率差(乾燥むら)を小さくするためには風量を出来る限り大きくすればよい。b)層内温度について乾燥開始後最下層は60分内外で風温に近い温度となり順次上層部に温度上昇が伝播してゆくが,初期含水率の大きいほど伝播に長時間を必要とし,また風速が小さいときも同様に長時間を要す,したがってテンパリング乾燥のごとく短時間の乾燥をくりかえす方式の場合には特に風速を大にするか,あるいは風温を高くして試料の概伴を併施する必要がある。c)手芒層の通風抵抗について風速vが0.10〜0.52m/sで手芒層の厚さLを5〜25cmとした場合,通風抵抗△Pmm水柱は次の近似式で示される。△P/L=2.35v^<1.48>mm水柱/cm
- 帯広畜産大学の論文
- 1970-11-25
著者
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