牛乳中に含まれる副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)の意味
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
乳牛の乳腺組織ではPTHrPが合成・分泌され,またそのレセプターであるPTH/PTHrPレセプターが発現していることから,PTHrPが乳腺組織において何らかの作用を有する可能性が考えられた。そこで本研究では,乳汁中のPTHrP濃度とCa濃度との関連を検討した。最初にMBP-ウシPTHrP[1-141]を合成し,スタンダードとして用いて血漿中ならびに乳汁中PTHrP濃度を測定した。まず,周産期のジャージー種乳牛1頭を用いて,PTHrPの乳腺組織からの分泌,ならびにCaの乳腺組織への取り込みについて検討した。すなわち,腹大動脈と腹皮下静脈(乳静脈)から血液を採取し,PTHrP濃度とCa濃度を測定し,動静脈差を求めた。血清Ca濃度はこれまでの報告と同様に分娩前後に一過性の減少が認められたが,その低下時にCa濃度の動静脈差は認められず,乳腺への取り込みは明らかではなかった。一方,血漿中PTHrP濃度はいずれの時期においても検出限界以下(0.57pM)で,動静脈差を検討することはできなかった。ついでホルスタイン種泌乳牛9頭について血漿中PTHrPの動静脈差を検討するとともに,乳汁中のPTHrPとCa濃度について検討した。その結果,血漿中PTHrP濃度は動静脈共に周産期のそれと同様,検出限界以下であった。一方,乳汁中のPTHrP濃度は著しく高く,28.4±7.6nM(平均±標準偏差)であり,90%以上が乳腺組織由来であることが明らかとなった。また乳汁中Ca濃度は98.7±13.3mg/dl(平均±標準偏差)であり,乳汁中のPTHrP濃度との間には有意な正の相関(P<0.01)を認め,乳腺組織由来のPTHrPが,乳汁へのCa輸送に関与している可能性が示唆された。
- 麻布大学の論文
著者
-
恩田 賢
麻布大学獣医学部内科学第三研究室
-
和田 恭則
麻布大学獣医学部内科学第三研究室
-
伊東 正吾
麻布大獣
-
伊東 正吾
麻布大学獣医学部
-
恩田 賢
麻布大学・獣医学部獣医学科
-
伊東 正吾
麻布大学・獣医学部獣医学科
-
伊東 正吾
麻布大学大学院
-
恩田 賢
麻布大学獣医学部
-
和田 恭則
麻布大学獣医学部
-
和田 恭則
山形県くみあい畜産研修センター
-
和田 恭則
麻布大学 獣医学部
-
伊東 正吾
麻布大 獣医
-
恩田 賢
麻布大学
-
伊東 正吾
麻布大学
関連論文
- 心室中隔欠損, 動脈管開存症および卵円孔開存を伴った大動脈縮窄症(大動脈縮窄複合)の子牛の一例
- コマーシャル農場において生産効率を高める繁殖技術
- 関節内パパイン投与による脚弱症モデル豚における軟骨病理学
- 牛における乳汁中の副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)とカルシウム濃度(臨床病理学)
- 牛乳腺における副甲状腺ホルモン/副甲状腺ホルモン関連蛋白質受容体mRNAの発現(短報)(臨床病理学)
- 周産期の牛乳腺における副甲状腺ホルモン関連蛋白質(PTHrP)mRNAの発現(臨床病理学)
- 有用細菌(乳酸菌等)の全ゲノム塩基配列決定,比較ゲノム解析および有用遺伝子の機能解明-第5報-(III.学術フロンティア経費,平成18年度麻布大学公的研究助成金事業研究成果報告)
- 有用細菌(乳酸菌等)の全ゲノム塩基配列決定,比較ゲノム解析および有用遺伝子の機能解明 : 第4報
- 食品残渣としてのオカラと畜産副産物としての血液の飼料化に関する研究 : (2)産肉性・肉質について
- 食品残渣としてのオカラと畜産副産物としての血液の飼料化に関する研究 : (1)増体・飼料の利用性・血液性状について