前立腺肥大症における交感神経系の関与について : 神経性調節と体液性調節

概要

論文の詳細を見る
前立腺肥大症における閉塞症状と刺激症状に対する交感神経系の関与を,神経性調節と体液性調節の両面より検討した.神経性調節については,前立腺組織ノルアドレナリン濃度を測定したが,前立腺肥大症では正常対照や膀胱頚部硬化症に比して有意に低値を示し,前立腺腺腫の発育は交感神経終末の対応した増加をともなわないことが判明した.一方,体液性調節については,経静脈的なノルアドレナリンの負荷(5μg/min)に対する尿道内圧(前立腺部尿道圧)の変化を指標としたが,前立腺肥大症では前立腺部尿道圧の有意な上昇が観察された.また,この前立腺部尿道圧の上昇率は,前立腺の大きさと直線相関を認めた.以上より,前立腺肥大症では腺腫の肥大にともなう平滑筋細胞の増生に対応した.レセプターの増加があり,結果的に前立腺部尿道がカテコラミンに対し感受性充進状態となっていると推察された.また,前立腺肥大症ではノルアドレナリンの負荷により,尿流率の有意な低下と,残尿量の有意な増加が認められ,うち3名には尿閉状態が誘発された.これらの事実より,前立腺肥大症における急性尿閉の発生や症状の増悪には,患者尿道の内因性カテコラミンに対する感受性充進が関与していると考えられた.さらに,刺激症状との関連については,無抑制収縮を有する患者群においてのみノルアドレナリンに対する前立腺部尿道圧の有意な上昇反応が観察され,前立腺肥大症におけるdetrusor instabilityが,内因性カテコラミンレベルの変動によりおこるurethral instabilityに起因する可能性が示唆された.結論として,前立腺肥大症の閉塞症状や刺激症状の発現には,体液性の交感神経調節が重要な役割を担っており,これらの症状の治療には前立腺部尿道における体液性交感神経因子の制御が肝要と考えられた.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1988-02-20

前立腺肥大症における交感神経系の関与について : 神経性調節と体液性調節

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク