前立腺高温度治療の効果発現メカニズムに関する基礎的研究

概要

論文の詳細を見る
前立腺平滑筋の収縮性が高温度被曝によりどのような影響を受けるかをinvitroで検討し, 高温度治療の効果発現メカニズムについて考察した.雄家兎の摘出前立腺切片をマグヌス管内に懸垂し, 経壁電気刺激, KCL Phenylephrineに対する等尺度性収縮力を測定した.まず37℃での収縮力を測定の後, 42℃, 45℃, 48℃, 50℃でそれぞれ30分間灌流加温し, 再び37℃として30分間冷却の後, 刺激に対する収縮力の変化を観察した.加温前の収縮力と比較すると経壁電気刺激による収縮は45℃でやや抑制, 48℃でほぼ完全に抑制された.一方, Phenylephrine収縮, KCI収縮は45℃でやや増強, 48℃で抑制されたが, その抑制率は, Phenirephrine収縮で高かった.いずれの収縮も50℃で完全に抑制された.組織学的変化をみると, 48℃加温後には平滑筋細胞の萎縮や核の濃縮が観察された.臨床の高温度治療3〜7カ月後の前立腺標本においても同様の平滑筋変性のほか, 神経細胞の退行変性が観察された.以上の結果より, 45℃までは前立腺に対する直接的影響はないと思われるが, 45℃以上で自律神経を障害, 48℃でα受容体ないしそれに関連した収縮機構を障害, 50℃で細胞膜の分極状態が破壊され, 細胞死に至ると思われた臨床の治療成績が前立腺の縮小を伴わないことから, その効果は執壊死吸収による形態的改善ではなく, 自律神経, 感覚神経の障害や細胞収縮機構の破壊による機能的変化に基づくものであろうと考えられた.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1995-08-20

前立腺高温度治療の効果発現メカニズムに関する基礎的研究

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク