霧ヶ峰亜高山草原における標高によるイネ科草本の種組成変化
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本州中部の亜高山帯のイネ科草原において,どのようなイネ科草種が分布しているのか,イネ科の主要な種組成が標高変化に伴う環境傾度に沿って,どのような影響を受けるているのか。現地における分布実態を,霧ケ峰草原において,1992年から1994年の3年間調査した。その結果,(1)霧ヶ峰地域の草原では,高標高地に民草型のヒゲノガリヤスを主要構成種とする群落が,低標高地にはススキを主要構成種とする群落が主として分布していた。また,一部にはイワノガリヤスを主要構成種とする群落も存在した。(2)霧ヶ峰草原の植生では,低標高の地点から高標高の地点へ,どの斜面方位でも植生は標高の変化に伴って連続的に変化していた。この植生の連続的な変化は,低標高地のC_4植物であるススキを主体とするススキ型群落から高標高地ではC_3植物であるヒゲノガリヤスを中心としたノガリヤス属型の群落への連続的な変化であった。(3)斜面方位による植生変化は,尾根を境とするような大斜面には見られ,東斜面と西斜面では,ススキ型群落からヒゲノガリヤス型群落への転換点に標高差にして約100mの差が見られた。しかし,大斜面にある小丘的な部分の斜面方位による植生変化は認められなかった。(4)過去の調査事例と比較すると,採草利用の中止によりニッコウザサの分布が拡大すると共に,トダシバを主要構成種とする群落が著しく減少し,これに伴ってマツムシソウ・シラヤマギク・メタカラコウ・マルバハギ等の種が減少する傾向にあることが明らかになった。
- 日本草地学会の論文
- 1997-01-31
著者
-
西條 好迪
岐阜大学流域圏科学研究センター
-
津田 智
岐阜大学流域圏科学研究センター
-
西條 好廸
岐阜大学流域圏科学研究センター
-
莫 文紅
岐阜大学流域環境研究センター
-
西村 格
日本自然保護協会
-
莫 文紅
筑波大学生物科学系
-
曽我 友紀子
向陽台高等学校
-
西村 格
岐阜大学流域環境研究センター
関連論文
- 地上部および地下部の成長からみた竹林拡大の解析
- 放棄竹林生態系の現存量ならびに炭素貯留量の推定に関する研究
- 滋賀県における航空実播工による牧草播種がおこなわれた山火事跡地(二次林焼失地)の植生
- 日本の暖温帯に生育する海浜植物14種の永続的シードバンク形成の可能性
- 日本の暖温帯に生育する海浜植物14種の海流散布の可能性
- 自然再生事業指針
- アロメトリー式から求めた地上部現存量と林分構成による放棄竹林の構造解析
- 10-2 分光反射計測による林床クマイザサ群落の現存量推定
- 西太平洋島嶼における泥炭地に成立するマングローブについて
- 1-13 ススキ型草地における放牧牛を用いた防火帯作りの成果
- ウダイカンバ二次林の資源保続に向けた地はぎ処理の試み
- 岩手県久慈市における1983年の山火事による落葉広葉樹林焼失地の植生
- 冷温帯落葉広葉樹林における林床のクマイザサ群落の炭素収支の評価
- 総合的な学習の時間「たねのひみつ」の実践
- 北海道中央部の針広混交林における山火事から87年が経過した森林群落の植生
- 小清水原生花園における海岸草原植生復元のとりくみ(草地学と保全2.草原生物多様性の保全の現場)
- 小学校6年生における5教科2領域を関連させた環境教育の実践
- 植生の移植や復元の事業を実施するにあたって考えておかなくてはならないこと
- 岡山県玉野における夏季の山火事の跡地植生
- 静岡県富士市浮島ヶ原のヨシ群落における埋土種子集団と植生の関係
- 岩手県釜石のスギ林における山火事後2年間の埋土種子集団の変化
- 地球環境への影響と植生の修復 : インドネシアの山火事の例
- マングローブ種の実生定着に対するAcanthus ilicifoliusの影響
- 東南アジア地域におけるマングローブ種の萌芽力の比較
- ドクゼリ(Cicuta virosa L.)の発芽特性と生活史の関わり(予報)
- 植生管理の手法としての火入れ (特集 流域生態系と水環境)
- 北海道小清水原生花園における火入れ後のハマナス(Rosa rugosa Thunb.)の生長と開花
- 室内に11年間保存されたヌルデを含む先駆性種4種の種子の発芽能維持
- モウソウチク地下茎の年間伸長量と成長様式の解明
- 箱根仙石原におけるヨシ群落の埋土種子集団
- 岩手県釜石のスギ林における山火事後2年間の埋土種子集団の変化
- 箱根仙石原湿原におけるヨシ群落の埋土種子集団
- 北海道中央部の針広混交林における山火事から87年が経過した森林群落の植生
- 10-3 中国内蒙古草原の保全と利用 : 1. 分光反射特性による植生状態の推定
- 冷温帯落葉広葉樹林生態系における土壌呼吸速度の時・空間変動 : 1.面的変動の計測と要因解析
- 霧ケ峰草原におけるC_3とC_4植物の分布および標高に伴う植物と土壌の炭素安定同位体比の変化.
- 異なる標高における亜高山性ノガリヤス属植物の生育反応
- 通気法による土壌表面および雪面CO_2フラックスの測定
- 静岡県富士市浮島ヶ原のヨシ群落における埋土種子集団と植生の関係
- CO_2フラックス観測で求めた森林の総生産量と生態系純生産量
- 衛星複合画像を用いた竹・樹木混生林の判読
- デジタル写真画像を利用した竹林地下部現存量の推定
- 異種衛星データを用いた竹林分布域の抽出
- 岡山県玉野における夏季の山火事の跡地植生
- 東南アジア地域におけるマングローブ種の萌芽力の比較
- 北海道小清水海岸草原における火入れと放牧後の植生変化
- 発芽生物学 : 種子発芽の生理・生態・分子機構
- 霧ヶ峰亜高山草原における標高によるイネ科草本の種組成変化
- 小清水原生花園の自然再生における順応的管理
- 木曽三川の河川敷草地における植生と粗飼料生産
- ライチョウの営巣環境としてのハイマツ植生
- 植生管理の手法としての火入れ
- 樹木と環境 第3回 : 火と樹木
- 火と植生(山火事がつくる環境)
- 火の生態学 : 植物群落の再生を中心として
- 樹木と環境 第3回 : 火と樹木(樹木医学の基礎講座)
- 一年生沙漠植物 Agriophyllum squarrosum 及び Bassia dasyphylla の水ストレスに対する光合成と水利用の反応