埋(うず)もれた十字架 : 天正遣欧使節と黄金の十字架
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概要
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大阪中津にある南蛮文化館(北村芳郎館長)には、美しい黄金の十字架が保存されている。この十字架は、北村芳郎館長の解説によると、1951年に長崎県南有馬町(南島原市)の原城本丸跡から発見されたが、実は天正の遣欧少年使節がローマ教皇から託されて日本に持ち帰り、キリシタン大名有馬晴信(プロタジオ)に贈ったものであるという。この黄金の十字架について、最初に、これまで不明であった十字架発見の状況(発見者や発見場所)を初めて明らかにした。次に、文献史料(原文はイタリア語)により、これは十字架の形をした聖遺物入れであり、有馬晴信の遺品であることを確認した。天正遣欧使節については、織田信長が狩野永徳に描かせて託したローマ教皇への贈物(安土城の屏風絵)が探し求められているが、この十字架は使節が日本に持ち帰った教皇からの贈物である。なぜ島原の乱の舞台となった原城跡に、有馬晴信の遺品が埋もれていたかという問題については、同じく晴信の遺品である山梨県甲州市大和町栖雲寺蔵「伝虚空蔵菩薩画像」(最近、泉武夫氏により元末14世紀の景教聖像であることが実証された)について述べ、キリシタン大名として刑死した晴信の側近くにいた者が、島原の乱の際に原城跡で殉教したのであろうと推論した。
- 2007-03-20
著者
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