東大寺領播磨国大部荘についての一考察
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概要
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大部荘の研究史を検討し、四つの問題を中心に学説整理と分析をおこなった。第一は大部荘の開発と支配地域であり、10年近い大部荘の現況調査や現地調査を通じて、大部荘の地域や水利関係が詳細に解明されたが、地域の分類や寺井の成立については諸説が分かれていることを述べ、原方と里方については、上方と下方に一致することを実証した。第二は荘園領主東大寺の支配の変遷であり、諸研究の整理と結論をまとめ、これまで具体的な分析がなされなかった大部荘地頭方について、地頭領から山門法華堂領大部荘地頭方の成立、地頭門田の東大寺領への編入という推移を、はじめて明らかにし、地域についても具体的な比定を試みた。第三は悪党についての問題であり、新史料の発見で、有名な永仁年間の悪党事件が、実は正応5年に始まったことが解った。また、兵庫関を支配した東大寺大勧進悪党円瑜の研究により、大部荘の悪党河内楠入道が楠木正成の一族である可能性が、さらに大きくなったことを説いた。第四は大部荘と水上交通の問題であり、加古川と瀬戸内海を結ぶ水運について、高砂津を重視する見解が最近出されたが、魚住泊が大部荘の倉敷地だとする新城常三説は揺るがないとした。しかし、大部荘に関する新城説のなかで、運賃が年貢の25%だとする見解や応仁の乱後に年貢が銭納化されたという見解については、訂正されなければならない。前者については実際の運賃は23〜25%であるし、後者については早くに赤松俊秀が鎌倉時代から年貢が銭納され、東大寺には換米して納入したことを指摘しているし、別の史料でもこのことが実証できる。
- 2003-03-06
著者
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