片麻痺模擬患者への車椅子移乗援助に関する研究 : 患者の安全・安楽・自立および看護者の腰痛予防を考慮して
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概要
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背景 車椅子移乗研究では、患者の安全・安楽・自立を考慮したもの、かつ、看護者の腰痛予防の観点から検討されたものは少ない。さらに、実際の臨床現場でどのような方法で車椅子移乗援助を行っているのかも不明である。目的 本研究では、患者・看護者ともに有効な車椅子移乗の方法を検証することを目的とした。方法 2002年6月、以下の調査および実験を実施した。1)実態調査 S県下100床以上4病院の看護者1070名を対象に無記名式質問紙による留置方式実態調査を実施した。2)移乗動作実験及び分析 看護者役は健康な看護学生10名とし、患者役は右麻痺状態を想定した平均的体格の看護学生1名とした。実験は、作業姿勢モニター(Macoct VM8-128)、表面筋電図(Myo System1200)を用いて、看護者・患者役の筋活動、作業時前傾姿勢を分析した。尚、両者には各作業後、患者の自立・安全への考慮、腰部疲労についてVisual Analog Scale形式で記入させた。3)車椅子移乗動作の方法 車椅子移乗動作は、実態調査結果および先行研究を参考に、看護者の左足を患者の患側である右足の外側に置く方法(外足)と患者の両足の間に置く方法(中足)の2種類とした。なお、対象は研究の趣旨に同意した者のみとし、研究参加に同意した後でもいつでも辞退可能であり、また、プライバシーの保護についても文書と口頭で伝えた。結果 実態調査の結果、673名の回答が得られ(31.4±9.2歳)、中足が最も多く84.4%であり、外足5.2%、はさみ足4.2%の順となった。次に、動作実験の結果、看護者の作業時に腰部に負担がかかりやすい前傾姿勢50度以上出現率は、中足法が37.5±32.8%であり外足法5.2±6.0%と比べて有意に高値を示した。また、筋活動においても、看護者では腰部筋である左右脊柱起立筋において中足法が高値を示した。一方、患者では左腓腹筋、左上腕二頭筋で外足法が高値を示した。患者の自立性を考慮したかの認識は、看護者・患者役ともに外足法が有意に高く、安全性においても同様であった。また、移乗時腰部疲労は、看護者では中足法が患者では外足法が高値を示し有意差を認めた。結論 以上より、片麻痺患者に対する車椅子移乗に関しては、患者の自立・安全・安楽を十分に考慮しながら、かつ、看護者の腰部負担も軽減できる援助法を見出すことが重要であり、患者の麻痺側を固定し健側は活用してもらういわゆる外足法が適していると考えられた。
- 2004-03-31
著者
-
横井 和美
滋賀県立大看
-
寄本 明
滋賀県立大学
-
藤田 きみゑ
滋賀県立大学看護短期大学部
-
伊丹 君和
滋賀県立大学
-
豊田 久美子
滋賀県立大学
-
久留島 美紀子
滋賀県立大学人間看護学部
-
下野 俊哉
医療法人石州会六日市病院
-
森下 妙子
滋賀県立大学人間看護学部
-
寄本 明
滋賀県大
-
寄本 明
滋賀県立大学大学院
-
藤田 きみゑ
滋賀県立大学人間看護学部
-
藤田 きみゑ
滋賀県立大学
-
横井 和美
滋賀県立大学 人間看護学部
-
伊丹 君和
滋賀県立大
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