顕微鏡下の脳神経外科手術における後交通動脈の解剖学的研究 : 特にその形態的バリエーションについて
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概要
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脳底部の腫瘍や脳底動脈瘤の顕微鏡下での脳神経外科手術の際に重要な後交通動脈の血管解剖を明らかにする目的で以下の検討を行った。50個の死体脳より得られた99本の後交通動脈(1例に1側の欠損あり)とその穿通枝を中心に,顕微鏡下にその外径,長さを測定し穿通枝の起始部,穿通部位を明らかにした。また,梗塞巣のCT像より後交通動脈の穿通枝の支配領域を検討した。その結果以下の知見が得られた。1)後交通動脈の長さは14.7mm (5-27mm),外径は1.4mm(0.5-4.3mm)であり,7.4本(3-12本)の穿通枝が,主に後交通動脈の上内側より分岐した。2)穿通枝は,ほぼ全例で,視索,灰白隆起,乳頭体,大脳脚を穿通していた。3)後交通動脈の太さにかかわらず,ほぼ同数で,同じ外径の穿通枝が存在していた。4)後交通動脈の外径は,内頸動脈近傍に比較して後大脳動脈近傍では平均0.2mm細く,かつ同部位に穿通枝数が少ない。後交通動脈の低形成型(外径が1.Omm末満)は33%にみられ,その30%で発達した穿通枝よりも,その分岐した部位より後大脳動脈側の後交通動脈は細い。これは今まで報告されていない。以上より,広い術野を得るために後交通動脈を切離するには,低形成型では後大脳動脈近傍が適切な部位と判断された。5)0.4mm以上の穿通枝は88%の例でみられ,それらは灰白隆起を穿通していた。6)加齢にともなう形態変化(迂回,蛇行)が,低形成型の長い後交通動脈に顕著に見られ,また,血管の偏位により動眼神経との位置関係も様々であった。6)臨床例のCT所見より,後交通動脈とその穿通枝の閉塞時には,視床下部と視床前端部を中心とした梗塞像が見られた。これらの形態的バリエーションを熟知し,後交通動脈とその穿通枝の温存に努めることは,脳底部の手術の際大切である。
- 千葉大学の論文
- 1991-02-01
著者
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