卵巣悪性腫瘍における腫瘍マーカーCA125及びTPAの組織内局在と血中値相関に関する臨床的,基礎的研究

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概要

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• 絨毛癌におけるhuman chorinonic gonadotropin(hCG)やSchwangerschaftsprtein 1(SP_1)のように組織局在と血清値が極めて明瞭に相関する場合もあるが,卵巣癌においてはα-fetoprotein (AFP)を除いて一部解離するのが通常であろう.本研究では日常臨床で頻繁に用いられている腫瘍産生性の腫瘍マーカー,cancer antigen 125 (CA 125)及びtissue polypeptide antigen(TPA)を取り上げ,血中値と組織局在の相関を検討し,以下の結論を得た。1) CA 125, TPA共に漿液性嚢胞腺癌で最高の治療前血中高値率(陽性率,各々68.6%及び54.3%)が得られた。しかしながら特異性が62.7%および87.3%と逆転したため,癌の血中値の相関(診断効率)は43.0%ならびに47.4%に留まった。2)両腫瘍マーカー共臨床進行期が進むに連れて陽性率が上昇し,血中値と癌容積,あるいは周囲組織の侵襲破壊度との関連が示唆された。3)治療前血中高値を示した漿液性嚢胞腺癌では治療による血中値の推移は完全手術群で96% (CA 125)および93%(TPA)が減少し,また再発群では両者とも100%上昇し,癌の存在と血中値間で高い相関が認められた。4)漿液性嚢胞腺癌21例にてCA 125は86%,TPAは71%,また粘液性嚢胞腺癌20例にてそれぞれ0%,75%の局在率が得られた。4)組織局在と血中値の解離は漿液性嚢胞腺癌ではそれぞれ19%(CA 125)および24%(TPA),また,粘液性嚢胞腺癌では30%(CA 125)及び0%(TPA)認められた。解離の要因として腫瘍マーカーの非特異性があげられるが,癌細胞内に局在が認められた症例でも血中濃度は必ずしも局在陽性細胞の占める割合,あるいは免疫組織学的陽性度と比例しない症例も見られた。5)培養細胞系における基礎的検討で細胞内局在と細胞内濃度は全例一致したが,細胞内濃度と培養上清中濃度は必ずしも正比例では無かった。6)両腫瘍マーカーの濃度が既にわかっている血清,培養液,および羊水を種々組み合わせて両マーカーの回収試験を行ったが,羊水にヒト血清を加えると,回収率はCA 125が51.33%,TPAは57.0%まで有意に低下する事が判明した。すなわち,産生組織から血中へ移行する際に腫瘍マーカーが修飾を受け,マスキングされ得る可能性が実験的に示唆された。

• 千葉大学の論文
• 1992-12-01

著者

• 深沢 一雄

  独医大 産婦

• 高見澤 裕吉

  千葉大学医学部産科婦人科学教室

• 稲葉 憲之

  千葉大学医学部産科婦人科学教室

• 深沢 一雄

  千葉大学医学部産科婦人科教室

• 岡嶋 祐子

  千葉大学医学部産科婦人科学講座

• 太田 順子

  千葉大学医学部産科婦人科学講座

• 高見沢 裕吉

  千葉大学産婦人科

• 高見沢 裕吉

  千葉大学医学部産科婦人科学講座

• 高見沢 裕吉

  千葉大学医学部産科婦人科

• 高見沢 裕吉

  千葉大学医学部

• 岡嶋 祐子

  獨協医大

• 高見沢 裕吉

  千葉大医学部産婦人科

• 芳野 春生

  千葉大学医学部産科婦人科学講座

• 鈴木 信夫

  生化学第二講座

• 鈴木 信夫

  千葉大学大学院医学研究院環境影響生化学

• 太田 順子

  千葉大学医学部産婦人科学教室

• 高見澤 裕吉

  千葉大学医学部産婦人科

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