ストレス課題における心臓血管系反応に対する怒り表出性の検討 : anger expression-inの効果
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概要
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近年,anger-in, anger-out, and anger-controlなどの怒り表出性が,冠動脈性心疾患 ( coronary heart disease: CHD)の発症に対して重要視されてきている.1980年代になると怒りや敵意がCHDと直接的に関連性があるという研究が増加した.たとえば,Dembroskiらは冠血管造影によるアテローム性動脈硬化症と怒りや敵意性との関連を報告した.また,Williamsは,MMPIの敵意尺度と動脈硬化度やCHDによる死亡率との関係を見出している.一方,Spielberger(1988) は,state anger, trait anger, and anger expressionを測定するために,State-Trait Anger Expression Inventory (STAXI) を開発した.さらに,本尺度は怒りの構成要因を再評価し,医療場面において高血圧やCHDのスクリーニングを行う目的で,STAXI-2に修正された.本研究では,ストレス事態における怒り表出性が心臓血管反応に及ぼす効果を検討した.STAXI-2の下位尺度であるanger expression-in尺度の得点を基に 21名の大学生を高anger expression-in群(高群;N=10)と低anger expression-in群(低群;N=11)に割り当てた.両群は,課題の成績により電気ショックを回避できる認知反応課題(20試行)を行った.課題試行中,心拍(HR),血圧(SBP, DBP),圧受容体反射(baroreflex sensitivity: BRS)を測定した. 低群ではすべての心臓血管反応には変化が認められなかったが,高群ではDBPのみに有意な増加が認められた.これらの結果から,高群では本ストレス事態は受動的対処事態を生じさせたと考えられる. Profile of Mood States(POMS)の結果では,低群では,ストレス課題終了後有意に各ネガティブな感情が低下したが,高群では,各ネガティブな感情の変化が認められず,高い値が維持された. さらに今後は,anger control-inを中心とするその他の怒り表出スタイルの詳細な検討が必要である.
- 2006-12-20
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