日本の深海産のクマ類(甲殻類)の4新種
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概要
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東京大学海洋研究所の「白鳳丸」によって行われた日本海溝および付近海域の研究航海(KH-67-2)で,1967年8月に釜石沖の水深1,270-1,280mの深海底よりビーム・トロールで採集されたVemakylindrus属(Diastylidae科)の1種と,東シナ海および隣接海域の研究航海(KH-68-2)で,1968年8月に宮古島北方沖,水深1,650mから得られたBathycuma属(Bodotriidae科),Makrokylindrus属とVemaklindrus属(Diastylidae科)にそれぞれ属すると考えられる3種は,研究の結果,次に述べる新種として記載される。1.Bathycuma rotunditectorum sp. nov.:宮古島北方沖(1,650m深)産の未成熟雄(腹部後部を欠く,頭胸部の長さ約5.9mm)1匹を完模式標本として記載される。本種に最も近縁と考えられる種頬に,カリフォルニア沖(1,174-1,218m深)から記載され,地中海(1,227深)?(STEPHENSEN,1915),および相模湾(約1,000m深)(GAMO,1967)からも記録されたB.longirostris CALMAN,1912と,インド洋(4,040m深)より記載されたB.magnum JONES,1969があるが,本新種の背甲を側面よりみると,背甲背縁が全長にわたり完全なアーチ状となっていることなどで,上述の2既知種と明らかに異なっている。2.Makrokylindrus(Coalescuma)jubatus sp. nov.:宮古島北方沖(1,650m深)から採集された。本新種は完模式標本に亜成体の雌(体長11.7mm)を,別模式標本に未成熟雄(体長7.4mm)を指定,他に副模式標本の4雌,1亜成体の雄(体後部を欠く)と2 manca幼生(雌)によって記載される。本新種は第3,4自在胸節が融合しており,Coalescuma亜属(BACESCU,1961,1962)に属する。本種に最も近縁と考えられる種類には,スラウエシ(セレベス)のボネ湾(Gulf of Bone)の1,158m深と,バンダ海の2,789m深より記載されたM.(C.)cingulatus(CALMAN,1905)と,バリ島南方沖の780m深より記載されたM.(C.)cinctus JONES,1969がある。M.(C.)cingulatusでは,本新種同様に,背甲中程を横断し輪状に配列する棘1列を有するが,背甲前部に大きな棘がないこと,M.(C.)cinctusでは,背甲を横断し輪状に配列する棘2列を有することなどで,明らかに本新種と区別される。本新種は以前に,GAMO(1971)およびDAY(1980)によりM.(C.)sp.(GAMO,1971)とされていたものである。3.Vemakylindrus grandidentatus sp. nov.:本種はDAY(1980)によりV. sp.(B)(GAMO,1971)とされていたものであり,宮古島北方沖(1,650m深)から採集された1匹の雌(体長7.6mm)を完模式標本として記載される。本種は一見次に記載する種に類似しているが,本新種の背甲には細かい棘の他に,背甲を横断する様にほづ4列に配列する大棘を有するなどで,次の種と区別される。4.Vemakylindrus oxycanthus sp. nov.:本種はDAY(1980)によりV. sp.(A)(GAMO,1971)とされたものであり,釜石の沖,水深1,270-1,280の所より採集された1匹の未成熟雌(体長10.3mm)を完模式標本として記載される。上述のV.grandidentatusの他に,本種に近縁と考えられるものに,南米のコロンビア沖(912m深)産のV.gladiator(BACESCU,1961),中米のコスタリカ沖(3,718m深)産のV.costalicans(BACESCU,1961)および,ケルマデック海溝(2,470m深)産のV.prolatus JONES,1969などがあるが,本新種の背甲上の棘の配置は上記3既知種の何れとも異なっており,明かに種を異にしている。
- 1988-10-31
著者
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蒲生 重男
Department of Biological Sciences, Graduate School of Science, The University of Tokyo
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蒲生 重男
Department Of Biology Faculty Of Education Yokohama National University
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