日本におけるハイクラゲ再発見と日本産ハイクラゲ類の概説
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概要
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ハイクラゲ類は大きなものでも傘の直径が5-6mmにしかならない,小型のヒドロクラゲの一群である.傘が著しく退化し扁平であるため,遊泳能力がほとんどないか,または完全にない.粘着性の触手をもち,海藻や海草上に付着して生活し,主に匍匐によって移動する底生性のクラゲ類である.日本からは,Staurocladia acuminata (Edmondson,1930)ハイクラゲ,S. vallentini (Browne,1902)ミウラハイクラゲ,S. oahuensis (Edomondson,1930)ヒメハイクラゲ,S. bilateralis (Edmondson,1930)チゴハイクラゲの4種が知られる.日本で初めて報告された種はハイクラゲである.この種は,かつてはイザリクラゲの名で知られていたが,1988年に昭和天皇が相模湾からミウラハイクラゲをご報告になられた際に,その和名をハイクラゲと改められた.ハイクラゲの日本初記録は,下田臨海実験センターの水槽内で発見された1個体から無性的に増殖した多数の個体に基づいたもので,その後,野外,実験室内を問わず,本邦からのこの種の発見はなかった.近年,筆者らは下田臨海実験センター近くの海岸でこの種を繰り返し採集し,下田の磯にこの種が生息していることを確認した.また,沖縄島中部西海岸の砂辺でも,この種を採集した.それらの標本に基づき,ハイクラゲを改めて日本から報告した.また,日本産ハイクラゲ類4種の本邦における地理的分布の新知見を含め,日本産ハイクラゲ類について概説した.
- 2006-03-27
著者
-
平野 弥生
Marine Biosystems Research Center, Chiba University
-
並河 洋
国立科学博物館動物研究部
-
平野 義明
Graduate School Of Science Chiba University:marine Biosystems Research Center Chiba University
-
平野 弥生
Marine Biosystems Research Center Chiba University
-
平野 義明
千葉大学海洋バイオシステム研究センター
-
平野 弥生
千葉大学海洋バイオシステム研究センター
-
並河 洋
国立科学博物館昭和記念筑波研究資料館
-
並河 洋
国立科学博物館
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