日本初記録の嚢舌類,placida daguilarensis Jensen,1990サミドリモウミウシ(新称)
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概要
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1949年,1955年の相模湾産後鰓類図譜および同補遺の出版以来,相模湾は世界的にも有名な後鰓類研究のメッカのひとつとなっている.近年のスキューバダイビングおよび水中写真撮影の普及によって相模湾の後鰓類の多様性は,かつて考えられていた以上に高いものであることが明らかになってきた.しかし,小型で隠蔽的な種が多い嚢舌類(order Sacoglossa)の多様性は,未だ十分に評価されているとは言えない.筆者らは,嚢舌類の多様性と海藻利用の実態について総合的研究を行っているが,その過程で,相模湾に頻繁に,また時には大量に出現するにも拘らず,本邦から未報告の1種の嚢舌類を発見した.詳細な形態観察の結果,この種は,1990年にホンコンから記載されたPlacida daguilarensis Jensen,1990であることが明らかになった.その後の調査から,この種は沖縄から北海道西海岸まで日本に広く分布していることもわかった.日本各地から得られた標本に基づき,日本産P. daguilarensisサミドリモウミウシ(新称)を詳細に記載した.本報告は,この種の基準産地外からの初めての報告である.サミドリモウミウシは,Ercolania subviridis (Baba,1959)ウスミドリモウミウシやPlacida sp. (sensu Baba,1986)ミドリアマモウミウシに体色や形状が類似する.前者とは餌海藻が異なるため,2種が同所的に出現する可能性は極めて低く,混同される危険性は少ない.しかし,ミドリアマモウミウシとは形態が類似する上に,ハネモ類,ツユノイト類などの海藻上でしばしば同所的に出現するため,混同される可能性が高いと思われる.そこで,ミドリアマモウミウシとの形態の比較を行った.また,ミドリアマモウミウシについては,学名をめぐって様々な論議がなされてきたので,そのことについても言及した.
- 2006-03-27
著者
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平野 弥生
Marine Biosystems Research Center, Chiba University
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平野 義明
Graduate School Of Science Chiba University:marine Biosystems Research Center Chiba University
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平野 弥生
Marine Biosystems Research Center Chiba University
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平野 義明
千葉大学海洋バイオシステム研究センター
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平野 弥生
千葉大学海洋バイオシステム研究センター
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Trowbridge Cynthia
オレゴン州立大学動物学科
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