「障害児のための芸術教育基礎論」の到達点と課題 : アクセントの周期性に焦点をあてた身体表現による三拍子理解を中心として
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究は、教員養成における芸術教科と障害児教育における「融合カリキュラム」研究の一環であり、「音楽を構成する諸要素の原理的学習ならびに身体感覚の理解を含めた実践的学習によって、授業者は音楽の基本を理解し教科内容と教育方法を明確にした授業実践力を形成することができる」という仮説に基づくものである。この仮説をふまえ、本稿では、教科専門音楽設定科目の「障害児のための芸術教育基礎論」において実施した授業カリキュラムの到達点と課題を明らかにすることを目的とする。具体的には、西洋クラシック音楽と機能和声の手法によってつくられた日本の三拍子の音楽について、それぞれの拍節感に焦点をあてて文化史的に比較しながらその原理を理解・習得するとともに、本学部附属養護学校高等部の生徒を対象にした音楽の授業づくりに取り組んだ。その結果、本授業の成果としては、第1に、障害児教育専攻の学生など必ずしも十分な音楽的専門性を有しない者であっても、拍節感に関する西洋と日本との文化的相違点の理解やそれぞれの拍節感の体得が可能であったこと、第2に、それらに基づいた題材「三拍子を感じよう」の授業づくりにおいては、履修学生たちがボイス・リズムや布を使った身体表現などを駆使し、拍節感の体得が可能な学習指導案を発案することができたこと、があげられる。一方、残された課題としては、第1に、拍節感体得のために三拍子の楽曲を簡略的にアレンジしたものの、時間的制約もあり、履修者各自がピアノ伴奏としての拍節感を表現することは困難であったこと、第2に、附属養護学校でのモデル授業を行う対象の生徒たちを理解・把握するための事前の授業時間が十分確保できず、「障害のある生徒たちを想定した授業づくり」という点で不十分さが見られたことがあげられる。
- 2006-02-28
著者
関連論文
- 「静けさを聴く」ことをテーマにした参加型音楽コンサートづくりの試み : 教員養成における芸術教科と障害児教育の「融合カリキュラム」その2
- 清水寛編著, 『日本帝国陸軍と精神障害兵士』, 不二出版刊, 2006年12月発行, A5判, 376頁, 本体価格5,800円
- 小学校との連携による創作をテーマとした音楽科の授業づくり : 公立学校を拠点にした理論と実践の統合を図る教員養成プログラム開発の一例
- 特別支援教育への移行期における小学校教員の意識調査
- 「障害児のための芸術教育基礎論」の到達点と課題 : アクセントの周期性に焦点をあてた身体表現による三拍子理解を中心として
- 小学生におけるADHD傾向と自尊感情
- 教育学部における総合的な芸術普及活動の授業の試み--知的障害養護学校における参加型音楽コンサート作りを事例として
- 知的障害養護学校における芸術教育の観点を取り入れた作業学習についての試み : 高等部窯業班と教育学部生の交流学習を通して
- 教員養成における芸術教科と障害児教育の「融合カリキュラム」の試み : 障害児のための手指を使った芸術活動を通して
- 和歌山県下の小中学校での特別支援教育における各種関係機関・専門機関との連携の現状と課題
- 和歌山県下盲・聾・養護学校における居住地校交流の実態に関する調査研究
- 養護学校卒業後の生活実態と仲間との交流の関係に関する研究 : W養護学校卒業生への調査をもとにして
- 戦前期日本の精神病学領域における教育病理学治療教育学の形成に関する研究
- X県下小学校における肢体不自由学級の「交流教育」に関する実態調査研究
- 辻浩著, 『住民参加型福祉と生涯学習-福祉のまちづくりへの主体形成を求めて-』, ミネルヴァ書房刊, 2003年12月発行, A5判, 238頁, 本体価格2,800円
- 池田千年の保護教育論(1)
- 少年教護法案成立経緯に関する研究 : 法案内容の変遷に着目して
- 病弱教育の歴史的変遷と生活教育 : 寄宿舎併設養護学校の役割と教育遺産
- 重症心身障害児施設における芸術療法に関する調査