幼雛の腸管内揮発性脂肪酸の形成に関する研究
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概要
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鶏幼雛の腸管内に含まれる揮発性脂肪酸(VFA)の出現時期と数量, およびその構成分画の日齢経過に伴う変動を明らかにする目的で, 実験を行った.用いたのは白色Leghorn種(Arbor Acres-26)の雄で, 孵化後1日目(1日齢)から10日目(10日齢)まで, 総計375羽を使用した.2日齢以後は, 市販の幼雛育成用配合飼料で飼育した.腸管内容物は, 小腸上部, 小腸下部, 盲腸および結腸の4部位から採取しGaschromatographyにより分析した.えられた結果は, 次のように要約される.1.1日齢の幼雛の腸管の全部位に, VFAが検出された.構成分画は, 酢酸(C_2), プロピオン酸(C_3)および正酪酸(n-C_4)で, 各部位の濃度(固形物g当り量)は, 給与飼料よりも高かった.腸管部位別量では, 小腸と盲腸にほぼ等しい割合で認められた.各部位ともC_2が最も多く, C_3,n-C_4がこれに次いだ.盲腸だけが, C_2,n-C_4,C_3の順であった.2.2日齢の特徴は, 小腸上部を除く他の部位におけるVFA量の急増であった.この増加は, C_2分画に起因した.イソ酪酸(i-C_4)が, 結腸を除いた部位に検出された.腸管各部位における各分画の割合はほぼ同じで, その量的関係は, C_2>C_3>n-C_4であった.3.3日齢から以降は, 小腸, 結腸が減少, 盲腸が増加する傾向で推移した.10日齢までの存在量は盲腸に圧倒的に多く, 次いで, 結腸, 小腸下部, 小腸上部の順であった.4.小腸上部, 小腸下部および結腸における分画は, C_2,C_3,n-C_4の常在分画の他, 日齢の経過に伴い, i-C_4が検出されるようになり, 4分画で構成された.各分画濃度は, 各部位とも, C_2,C_3,n-C_4,i-C_4の順であった.各分画の腸管部位別の比率は, 日齢の経過に伴い漸減する傾向を示した.5.盲腸内VFAは, 日齢の結過とともに分画数を増し, 5日齢において, C_2,C_3,i-C_4,n-C_4,イソ吉草酸(i-C_5), 正吉草酸(n-C_5)の6分画形成がみられた.C_2は5日齢まで急増し, 以後減少し安定化に移行した.他の分画はおおむね増加を示し, とくにn-C_4が高濃度を持続した.各分画のうち, C_2が最も多く, n-C_4,C_3がこれに次いだ.その他の分画の量的順位は一定していなかった.各分画が腸管内で占める割合は, 日齢経過とともに増加した.なかでも, C_2,C_3およびn-C_4は, 5日齢以後安定した経過をとった.6.腸管内固形物量は, 日齢とともに増加した.7.腸管内容物pHは, 盲腸が最も低かった.8.給与した幼雛育成用配合飼料中には, C_2,C_3およびn-C_4が認められた.以上の成績は, 1)腸管内容物中VFAの分画形成は, 孵化後早期に確立する, 2)VFAの産生, 吸収の主な部位は盲腸にある, 3)盲腸内VFA量および分画は, 日齢とともに増加する, 4)盲腸内VFA分画の比率は成鶏と相異する, ことを示し, 幼雛の発育に対する盲腸内VFAの重要性が示唆された.
- 鹿児島大学の論文
- 1982-03-19
著者
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