甘藷の塊根組織諸特性に関する統計遺伝学的研究
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概要
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1)甘藷塊根の組織学的諸形質の遺伝様相を明らかにするために, 高でん粉近交系統および実用品種を含む33系統(または品種)と, それらの相互交配による30交配組合せのF_1実生個体とについて, 塊根の組織諸特性を比較した.2)塊根の肥大程度, でん粉含量, および皮部の厚さ, 外篩部面積, 内篩部面積, 木部柔組織の細胞の大きさ, 木部柔組織の大型柔細胞分裂の頻度などの塊根の組織諸特性は, いずれも交配組合せによって差異が認められる.3)塊根組織諸特性の親子回帰のうち, 内篩部面積に関する回帰は有意であり, 木部柔組織の細胞の大きさに関しては有意に近く, 皮部の厚さ, 外篩部面積, 木部柔組織の大型柔細胞分裂の頻度に関する回帰も有意に近い値が認められる場合がある.したがって, これらの組織諸特性には遺伝子の相加的作用が, かなり関与しているものと思考される.4)塊根組織諸特性のヘテロシス(F^^-_1-P^^-)は, 組合せ全体を通しては顕著ではなく, 外篩部面積のへテロシスを除き有意ではない.なお, 外篩部面積のへテロシス(F^^-_1-P^^-)は概して正の値を示すが, 内篩部面積のヘテロシス(F^^-_1-P^^-)は負の値を示す傾向が認められる.5)しかし, ヘテロシスの発現は組合せによって異り, 皮部の厚さ, 内篩部面積, 木部柔組織の細胞の大きさ, および木部柔組織の大型柔細胞分裂の頻度などのヘテロシスは, 両親平均値が小さい場合には発現するが, 両親平均値が大きい場合には発現し難い傾向が認められる.6)また, 内篩部面積のヘテロシスは, 両親の近交程度が大きい場合には発現し難い場合があるので, 遺伝様相については, さらに, 詳細に究明することが必要である.7)塊根径のヘテロシスと, 皮部の厚さ, 木部柔組織の細胞の大きさ, および, 木部柔組織の大型柔細胞分裂の頻度などのヘテロシスとの間には, かなり密接な関係が認められる.
- 鹿児島大学の論文
- 1968-02-15
著者
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